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2012 年度 実施状況報告書

小国のEU統合政策-国家存続と統合の狭間をめぐる葛藤-

研究課題

研究課題/領域番号 23530201
研究機関東洋英和女学院大学

研究代表者

小久保 康之  東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (60221959)

キーワードアイスランド / EU / 小国
研究概要

本年度はアイスランドのEU統合政策に焦点を当てて研究を進めた。
同国は、従来欧州統合とは一定の距離を保ちつつも、EUの市場統合に歩調を合わせる形でEU統合に関わってきた。しかしながら、人の自由移動に関するシェンゲン協定には、EU非加盟国でありながら参加しており、EEA(欧州経済領域)への参加と併せると、EUと極めて密接な関係を近年構築しつつあった。2008年のリーマンショックにより、金融立国として近年繁栄していた同国の銀行が破たんするに及び、小国として、政治的・経済的なシェルターの必要性を感じ、翌2009年にはEUへの加盟申請に踏み切ることになる。
しかし、国内においては、EU加盟派が必ずしも多数派を構成しているとは言い難い状況にあり、漁業資源をめぐる問題や農業政策を巡って、EU加盟の是非が国民的論争の焦点となっている。現政権はEU統合に向けて前向きであるが、最大野党の独立党は特に地方の利権との結びつきが強く、加盟に反対の立場を取っている。今年3月の現地調査において、アイスランドがそのような国内状況を背景に、EUへの加盟交渉を早期に進めるのは得策ではなく、国民が納得できる結果を交渉で導き出そうとしている最中にあるということが明らかになった。小国として、正にEU統合に参加すべきか、一定の距離を置くべきか、逡巡している様子が伺えた。
このような研究成果は、日本国際政治学会国際統合分科会で口頭報告したが、今後論文の形で、日本EU学会年報に投稿する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

学務や授業の準備などに多くの時間を取られ、海外現地調査も予定の2回を実施することができず、主にアイスランド1国の調査に留まってしまった。現地調査が年度末にしか日程が組めなかったこともあり、研究成果を本年度中に論文の形でまとめることができなかった点はやや研究の進展が遅れる要因になっている。

今後の研究の推進方策

まずは、本年度末に実施したアイスランドの現地調査を踏まえて、同国のEU加盟問題について論文の形にまとめ、公表する方向で投稿することを検討する。また、ベルギーのEU統合政策についても昨年度の現地調査の結果を含め、新しい情報を入手して論文の形で公表したいと考えている。
次年度の現地調査は、マルタとスイスを予定しているが、日程はまだ不透明である。マルタについては、現在EU加盟国の中で最小国であり、EU加盟も最後まで逡巡していた国なので、加盟後の国民の反応やEU加盟による恩恵と問題点についてして調べてみたい。また、スイスについては、依然としてEUに非加盟のままであるが、そのことによる不都合が生じているのか、それとも、シェンゲン協定や2国間協定により、EU加盟に敢えて向かわなくとも現状で十分なのか、今後EU加盟に向けての動きがあるのか、といった点について、インタビュー調査を実施したいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

本年度予定していた海外現地調査が1回分実施できなかったこと、および学生の資料整理のアルバイトが所属機関の雇用体系が煩雑で簡単にお願いできなかったことから手つかずの状態になったことで、余剰金が多く発生してしまった。
次年度は、海外現地調査の出張回数を増やし、マルタ、スイス、ベルギーの3カ国を中心に回ることを検討しており、旅費の支出額が増加することが予想される。また、学生アルバイトをなんとか活用して文献収集や整理の手伝いをしてもらい、効率良い研究を進めることを検討したい。
物品費に関しては、引き続き、EU統合の全体像を把握するために必要な書籍や各加盟国の個別政策に関する研究書を購入することに充当してゆきたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] アイスランドとEU-EU加盟に向けて-

    • 著者名/発表者名
      小久保康之
    • 学会等名
      日本国際政治学会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
  • [図書] EU・西欧2012

    • 著者名/発表者名
      押村高・小久保康之編著
    • 総ページ数
      238頁
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

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公開日: 2014-07-24  

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