研究課題/領域番号 |
23530201
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研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
小久保 康之 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (60221959)
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キーワード | マルタ / アイスランド / スイス / EU / 小国外交 |
研究概要 |
本年度は、マルタ、アイスランド、スイスの3カ国の対EU政策の現状についての現地調査を中心に研究を進めた。 まず、マルタに関しては、マルタ外務省や在EUマルタ大使館での聞き取り調査などから、加盟以前には国内が加盟派と反加盟派に分裂していたが、EU加盟後は経済的な発展や観光業の振興など国民への恩恵も多く、現時点ではEU加盟に対する懐疑的な意見が影を潜めている状況を確認した。しかし、人口35万人の小国として、EUの政策決定の中で存在感を示すのは難しく、また将来の議長国を務める準備をするにあたって、EU政策を担当できる人材の育成に苦労している側面が伺えた。 アイスランドについては、ブリュッセルの欧州委員会の加盟交渉担当者や駐EUアイスランド大使館などで聞き取り調査を実施し、EU側としてはいつでも加盟交渉を再開できる用意をしてアイスランドの動向を見守っている状態であること、アイスランド側としては現政府がEU加盟反対を表明しており、近いうちに国民投票を行って意思表示を確定したいとしているが日程はまだ未定である、という膠着状態にあることを確認した。EU側にとっては、アイスランドは小国であるため、EUに加盟してもしなくても殆ど政治的・経済的な影響はないと考えており、事態の方向を決めるのは、ひとえにアイスランド国民の選択に掛っている状況にある。 スイスについては、スイス外務省やスイス諸政党への聞き取り調査を実施し、スイスがEU加盟ではなく、「第3の道」としてEUとの包括的な2国間条約を結ぶ方向で交渉を進めている状況を確認できた。しかし、スイスの直接民主主義との整合性や、スイス極右政党の躍進など、EUとの連携を深めることに対する懸念の声も多く聞かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1昨年までは、現地調査自体が遅れ気味であったが、本年度にマルタ、ブリュッセル、スイスの3回の現地調査を実施し、これまで遅れていた調査対象国の対EU政策の現状や方向性について現地での情報や資料を入手することができた。 但し、研究成果について年度内に公開する時間的余裕がなかったため、その点については次年度にまとめて研究成果の公開に向けて努力する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画の中で現地調査対象国として最後に残っているノルウェーについて、オスロ、ブリュッセルなどを中心に現地調査を実施したいと考えている。また、本年度までの研究成果をまとめる段階で必要に応じて、調査対象国に再度訪問することも検討したい。 本年度は、研究最終年度であるため、これまでの研究成果をまとめ、論文・図書の形で公開することに重点をおいて研究活動を進めてゆきたい。さらに、小国のEU政策の共通点や相違点を明らかにすることで、EU統合をめぐるヨーロッパ諸国間のダイナミズムの一端を明らかにしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ブリュッセル、ベルンでの現地調査に要した旅費が予定より少なかったため、余剰分が生じた。また、学生アルバイトを雇用しなかった分も余剰となって残った。 当初の研究計画より現地調査の回数を増やし、より最新かつ幅広い情報・資料収集に効率的に使用したい。また、研究成果の報告書作成等で最終年度としての補助金の有効な活用を考えている。
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