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2014 年度 実施状況報告書

小国のEU統合政策-国家存続と統合の狭間をめぐる葛藤-

研究課題

研究課題/領域番号 23530201
研究機関東洋英和女学院大学

研究代表者

小久保 康之  東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (60221959)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2016-03-31
キーワードアイスランド / スイス / EU / 小国外交
研究実績の概要

本年度は、すでに現地調査を実施したアイスランドのEU加盟申請の交渉状況およびスイスの対EU政策について、集中的に資料・情報を整理し,分析した。
アイスランドが、2009年にEUへの加盟申請を行った背景にリーマンショックによる金融混乱があり、EU加盟による政治・経済的保護を求める方向に動いたものの、漁業問題や主権の委譲を巡り、同国保守派のEU加盟に反対する動きと拮抗し、加盟交渉が中断するに至る過程を明らかにすることができた。2015年3月に、アイスランド政府は正式に加盟申請を撤回したため、国内では加盟交渉継続を求めるデモが起きるなど、新しい動きが生じている。そのため、論文を最終的にまとめる前に再調査が必要な状況となってしまった。小国が特定の利害をEUという巨大な組織の中でどう守るかという問題に直面している様子が浮き彫りになったケースと言えよう。
スイスは、欧州経済領域への加盟を1992年に国民投票で否決したため、中央政府および外務省を中心として、EUとの2国間条約を結ぶと同時に自発的に国内の法制度をEU法に近づけるという「第3の道」を進めてきた。1999年にはEUと7分野で第1次バイラテラル協定を、2004年には9分野で第2次バイラテラル協定を結び、スイスとEUとの関係調整に努めてきた。しかし、極右政党のスイス国民党の進出もあり、2014年2月には、移民規制を求める国民投票が可決され、3年以内の憲法改正を余儀なくされている。もし移民規正法を制定すれば、先の第1次バイラテラル協定がすべて破棄されるという緊急事態に追い込まれており、スイスはEUとの関係見直しを迫られている。この点も再調査が必要となっているが、EU統合が小国の市民に及ぼす心理的な影響という視点から興味深い研究成果が得られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成26年度は、2回の現地調査を計画したが、丁度ウクライナ情勢の急変や、イスラム国問題など、ヨーロッパの治安が急激に悪化したため、身の安全を考えて現地調査を直前に見送らざるを得なかった。そのため、予定していたノルウェーの現地調査、ブリュッセルの欧州委員会でのヒヤリングなどができなかった。
さらに、研究成果のところにも記載したが、論文にまとめている最中に、重要な動きがあり、その後を再度調査しないと、論文として完結できない状況に陥ってしまった。
そのため、研究成果の発表が予定より遅れ気味になっている。

今後の研究の推進方策

平成27年度も継続して研究費を繰り越して研究を続けることを承認して頂いたので、平成27年度は、アイスランドとスイスのその後の状況およびノルウェーの状況について現地調査を実施する予定にしている。
アイスランドとスイスについては、新たな情報を追加して考察を加え、ノルウェーについても、1972年の国民投票に遡って同国の対EU政策を整理し、小国と巨大組織となったEUとの関係について、個別に整理すると同時に、マルタやベルギーのように積極的に参加している小国との比較も含めて、総合的な考察を行いたい。

次年度使用額が生じた理由

現地調査を2回計画したが、ウクライナ情勢の悪化、イスラム国問題といったヨーロッパ情勢の治安の急激な悪化と調査計画期間が重なり、身の安全を優先して、現地調査を中止したため、旅費が未使用額として残ってしまい、次年度に繰り越すことになった。

次年度使用額の使用計画

本年度は、昨年に比べて治安が回復傾向にあるので、残額を使用して、アイスランド、スイス、ノルウェー、ブリュッセルでの現地調査を実施する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] EUの中のスイス-第3の道の継続は可能か2015

    • 著者名/発表者名
      小久保康之
    • 学会等名
      日本EU学会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      2015-11-22
  • [図書] 現代の国際政治 第3版2014

    • 著者名/発表者名
      長谷川雄一・金子芳樹編著
    • 総ページ数
      430
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

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公開日: 2016-05-27  

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