研究課題/領域番号 |
23530206
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
瀬島 誠 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60258093)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 政治学 / 国際関係論 / 核拡散 / コンピュータ・シミュレーション |
研究実績の概要 |
平成27年度は、その前年度の実施状況報告書に記載したとおり、目標は2つあった。 第一の目標は、これまでの質的分析、量的分析、コンピュータ・シミュレーション分析の検討を踏まえ、複合的なシミュレーション・モデルの作成であった。核拡散の動因を巡る分析においては、他国からの脅威や同盟国との関係という対外的な要因を重視する議論が主流である。他方、Etel Solingenらのように、対外的な要因の重要性を認めつつも、核保有を決定する国の国内情勢をより重視する議論もあり、質的な分析に加えて、量的な分析でもその重要性を指摘する研究も存在する。前年度に、対外的な要因を取り込んだシミュレーション・モデルの精緻化と結果の頑強性の検討を進めてきたが、平成27年度には、他方の国内要因をシミュレーション・モデルに組み込むための研究に重点を置いた。具体的には、Solingenの相互依存モデルをコンピュータ・シミュレーションに組み込む作業を中心に行なった。その途中経過は、シンポジウムMulti-Agent Simulation (MAS) and Global Issuesにおいて、Dependence and Conflictsというタイトルで報告をした。 第二の目標は、核拡散に対する政策の研究を進めることであった。これについては、文献の検討を中心に進めた。イランの核保有を巡る交渉が進展するという、核拡散を抑える動きを中心に検討した。しかし、ウクライナ情勢を巡って核保有国のロシアが核戦争の備えをし、また、同じく核保有国の北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルの実験に成功するなど、既に核を保有する国が新たな核の問題を引き起こす事態が発生した。これらの新たな事態にどう取り組むのか、その検討が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の5年間の研究機関のうち、4年目の平成27年度における達成度は、おおむね当初予定していた実施計画に沿って順調に進められたと評価される。しかし、ロシアの核戦争準備など新たな国際情勢の変化を受け、更なる検討が必要となった。 初年度に当たる平成23年度の研究目的は、核拡散のダイナミクスに関する既存の質的研究を再検討し、2年度目の量的研究と3年度目のシミュレーション研究の基盤作りであった。 2年目に当たる平成24年度は核拡散の量的分析を中心に検討した。そこでは、数量分析にとっては死活的な事例の少なさという限界があり、それを核拡散以外の拡散現象一般に拡げる対策を検討した。しかし、核兵器という国家の権威発揚というシンボリックな現象と他の拡散現象を同列に捉えることができるかという問題が課題として残った。 平成25年度には、既存の質的分析におけるモデルを元に、コンピュータシミュレーションモデルを複数作成し、それらの結果分析を進めた。さらに、複数のモデルを組み合わせる複合的なモデル作成に向けて、その雛形となる、2009年のモデルについて再検討と新たなデータによる分析が行われた。それによって、研究計画の4年目で計画している、量的分析、質的分析、シミュレーション分析を組み合わせた、複合的なモデル作成の基礎は構築された。 そして、平成26年度には、対外的な要因を中心としたモデルに、量的分析と質的分析で重要性が指摘される、国内要因を取り込んだ、より複合的なモデル作成が試みられた。相互依存と紛争の関係をシミュレーション・モデルとして作成することによって、国内政治要因と相互依存、核保有と対立のモデル化が試みられた。平成26年度には、また、政策研究が着手されたが、新たな国際情勢の変化を取り込んだ、さらなる検討の必要性が明かともなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進については、当初の実施計画に沿って推進する。平成27年度は本研究の最終年度であり、その成果を学会報告、学術論文、書籍などの形で外部に発表する。課題としては、記述の通り、ロシアや北朝鮮を巡る核情勢の変化をどのように政策研究として、本研究の枠内で扱えるかがある。できる限り、この点を検討しなければならない。
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