研究課題/領域番号 |
23530207
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
伊地 哲朗 関西学院大学, 法学部, 准教授 (90512963)
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キーワード | 国際情報交換 / 国連 / 武力紛争 / 仲介外交 / 和平交渉 / タジキスタン;アメリカ |
研究概要 |
本研究の主たる目的は、1)タジキスタン内戦の和平交渉と仲介外交に関する事例研究の完成、および2)国際紛争、特に内戦形態の武力紛争をめぐる和平交渉と仲介外交に関わる包括的理論構築の基盤づくり、であるが、前年度までに当該研究課題の遂行にとって必須と思われる海外調査の大部分は既に完了している。そこで本研究の三年目に当たる平成25年度には、これまでに実施した一連の海外調査の成果、またタジキスタンから招聘した専門家との意見交換などから得られた知見や情報の整理・分析が研究活動の中心となった。とりわけ、和平交渉に参加した実務家(タジキスタンの旧政府側、および反政府側の交渉団メンバーや仲介者として関与した国連関係者など)、そしてアメリカ在住の和平交渉・仲介外交の理論研究者などを対象にした聞き取り調査や意見交換の過程で得られた新たな情報や知見を、先行研究や既存の情報源から得られていた情報や分析と比較・精査しつつ、研究テーマに関わる分析と議論の精緻化に努めた。そうした中で、今まであまり積極的な関心を払っていなかった研究領域から本研究課題を捉えなおすきっかけを得ることが出来た。加えて、タジキスタン事例をより広い歴史的文脈の中に位置づけて再解釈するための考察を本格化した。冷戦後の武力紛争の国際仲介、そしてより最近の国際的な和平仲介の事例に鑑み、タジキスタン和平プロセスがいかなるインプリケーションや教訓を与えうるのか、という視点から研究を活性化させることが出来たと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二つの主要な研究目的、つまり、タジキスタン内戦の和平交渉と仲介外交に関する事例研究の完成、および内戦の和平交渉と仲介外交に関わる包括的理論構築の基盤づくり、を進める上で、前年度までに実施してきた海外調査や意見交換から得られた情報の整理・分析に専念することが出来た。そうしたプロセスは当初の予想以上に時間を要したが、本研究の具体的テーマ、1)主権国家、国連、地域機関、非政府組織など様々なアクターの仲介的役割、2)そうした多種多様な仲介者間の連携・調整、3)国際的仲介のタイミング、4)国際的仲介案の合意形成、をこれまで強く意識していなかった理論的・歴史的視点から捉えなおすことが出来たのは、一定の成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の最終年度を迎えるに当たって、まずはタジキスタン事例研究を単著の形で上梓することで、これまでの研究成果を集大成として発信することを最優先の目標としたい。そのために、これまでに実施した一連の海外調査の成果や専門家との意見交換から得られた知見を踏まえつつ、最近の主要な研究成果を収集・吟味し、当該研究に十分生かしたいと考えている。その上で、タジキスタン内戦の事例研究を比較の観点から捉えなおすとともに、歴史的文脈に位置づけることで、内戦終結における交渉と仲介の役割に関する理論構築の基盤づくりを目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、前年度までに実施した一連の海外調査の成果や、タジキスタンから招聘した専門家との意見交換から得られた知見などをとりまとめて単著の形で発表する予定であった。しかし、得られた情報の整理・分析や議論の精緻化に予想以上の時間を要したうえ、追加的な情報収集や当該研究課題に関連する最近の資料や文献の収集・吟味をさらに推し進める必要性が発生したため、未使用額が生じた。 このため、単著を脱稿する過程で生じる書籍や関連資料の購入費、また追加的な情報収集を目的とした国内外の調査出張のための経費、および研究成果発表のための学会参加に要する経費などに、未使用額を充てることとしたい。
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