本研究の交付申請書で掲げた主たる目的は、1)タジキスタン内戦の和平交渉と仲介外交に関する事例研究の完成、および2)国際紛争、特に内戦形態の武力紛争をめぐる和平交渉と仲介外交に関わる包括的理論構築の基盤づくり、の二つであった。前者に関しては、前年度までに実施した一連のフィールドワークや関連領域の専門家との意見交換から得られた情報や知見などの整理・分析を踏まえ、最終年度に当たる今年度は、研究テーマに関わる分析と議論の精緻化を最優先課題とした。そうした中で、最終年度の主な成果は、交付申請書上の研究実施計画で言及した具体的テーマ、1)主権国家、国連、地域機関、非政府組織など様々なアクターの仲介的役割、2)そうした多種多様な仲介者間の連携・調整、3)国際的仲介のタイミング、および4)国際的仲介案の合意形成の全てを、タジキスタン事例の文脈の中で網羅的かつ本格的に取り上げることが出来たことであると考えている。近々タジキスタン事例研究を単著の形で上梓し、タジキスタン和平プロセスが与えうるインプリケーションや教訓を提示したいと考えている。 今一つの研究目的である、内戦終結における交渉と仲介の役割に関する理論構築の基盤づくりについては、これまで前述のタジキスタン事例研究と同時並行的に進めてきた。前年度までに収集・吟味した最新の研究成果や関連諸領域の研究動向からの知見を取り入れつつ、今年度は、上記に挙げた具体的テーマのうち、1)と2)に焦点を当てる形で、とりわけポスト冷戦期から21世紀に至る歴史的文脈における国連による紛争仲介に関する考察を深めることが出来た。また3)と4)については、研究実施計画で言及した、「紛争成熟度」概念を、紛争当事者側および第三者的仲介者側の双方から捉え直す試みを本格化することが出来たことも最終年度の成果と位置付けている。これらの成果も近々公表を目指しているところである。
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