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2012 年度 実施状況報告書

徳川幕府の外交儀礼――近世アジア域内交流から幕末対欧米外交への連続性を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 23530209
研究機関国際日本文化研究センター

研究代表者

佐野 真由子  国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 准教授 (50410519)

キーワード国際関係史 / 朝鮮通信使 / 欧米外交官 / 幕臣 / 経験の蓄積
研究概要

本研究は、徳川幕府による外交儀礼の詳細に迫り、そこから、近世を通じたアジア域内外交の経験が、幕末期に開始される欧米諸国を相手とした国際関係の土台となったことを、実証的に示そうとするものである。
報告者は、本研究計画の主要な前段となった科学研究費補助金プロジェクト(若手B)「徳川外交の連続性―『近世』から『幕末』へ、幕臣筒井政憲に見る経験の蓄積に着目して」を通じ、徳川幕府において、幕末期に欧米諸国から来日した使節への対応様式が、それ以前の朝鮮通信使迎接時の慣例を原点として順次整えられていった様子をかなり具体的に把握していた。その際、従来は、朝鮮通信使迎接から、直接にはとりわけ安政4(1857)年の米国使節タウンセンド・ハリス迎接へと継承された儀礼態様に着目し、その様相をさらに詳細に分析することに努めてきたが、それを踏まえ、引き続き他国の外交使節を迎えて行われた儀礼への展開を時系列的に跡付けることを本研究の大きな目的と位置づけている。
これについて研究第2年度となった平成24年度には、対象を江戸城中における将軍拝謁儀礼にしぼったうえで、蘭ドンケル=クルチウス(1858 年)、露プチャーチン(1858年)へ、再びのハリス登城(1859年)とその再挙行(1860年)を経て、英オールコック(1860 年)、仏ド=ベルクール(1860年)の将軍拝謁儀礼へと、順次、前例に基づいて様式が整理され、ひいては当時の徳川幕府としての外交儀礼が確立していく様を、日本側、諸外国側双方の史料から実証的に追跡することができた。この結果は、準備に直接かかわった幕臣らの動き、人脈に関する考察と合わせ、本研究の全体的な成果の主軸部分を構成することになると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では当初より、目標達成に向けて次の二つの軸を設定している。
1)近世の朝鮮通信使迎接儀礼から、米使節タンセンド・ハリス拝謁儀式への継承に続き、後に続く蘭使節ドンケル=クルチウス、英使節オールコックの段階へと、幕府側の対応が順次、前例に基づいて整理されていく様を跡付けること。
2) 上記1)のように順次、儀礼のあり方が検討されていく過程は、その実践に現場でかかわった幕閣・幕臣たちが先輩から後輩へと経験を語り継ぎ、外交認識を共有するとともに、時代に即して理解を改めていく格好の舞台となったとの観点から、徳川幕府の外交儀礼に携わった歴代の担当者らの政見や行動、その背景をなした職業経験の蓄積を掘り下げること。
このうちとくに1)について、上欄記載のとおり、当初の「朝鮮通信使から米使節タンセンド・ハリスへ」の段階から大きく研究が進捗し、「点から線へ」の展開を追跡しつつ、結果として、幕末期の徳川幕府において西洋諸国に対する(江戸城中)外交儀礼様式が事実上確立したと考えられる万延元(1860)年までの経緯を、きわめて実証的に明らかにすることができた。
またその分析は、同時に2)の側面と切り離せないものであり、とくにこの時期までの経過の「つなぎ役」を担った永井尚志を中心に、その人物像がかなり明らかになってきたと考えている。

今後の研究の推進方策

最終年度は、ここまでの展開を踏まえ、こののち1867年に至る経緯について十分な分析を行っていく予定である。とくに徳川時代最終年に、第15代将軍慶喜によって行われた大坂城での各国公使引見は、むしろ欧米側の外交官らに「西洋式」儀礼と評されており、しかし実態としては明治以降のように可視的な西洋化がなされたわけではなかったことから、この概念の実質を問い、幕末期における外交儀礼展開の当面のまとめとすることが大きな目標となる。
これを達成するためには、日本国内と並行してイギリスを中心とする諸外国の史料をさらに実証的に調査することに加え、西洋諸国側の儀礼伝統について理解を深めることが欠かせないと考えている。海外渡航の機会に関連の文献を集めつつ、その角度から研究に厚みを持たせていくことを重視したい。ここに、従来からの研究軸である、現場の担当官らの人脈という観点を併せ持つことによって、最終的に、生身の人間である日本側の幕臣たちと諸外国の外交官たちが双方からかかわり合い、東西文化の事実上の融合を図っていったきわめて興味深い場面としての幕末外交儀礼の実態が浮かび上がるものと仮定している。

次年度の研究費の使用計画

昨年度からの繰り越し分を合わせ、最終年度の費用は、イギリスにおける在外史料調査にあてる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 東アジアの歴史をつくった人たち―研究雑感2012

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 雑誌名

      爽恢

      巻: 第25号 ページ: 3

  • [雑誌論文] 東アジアの一大都市 “Osaca”から考える2012

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 雑誌名

      漢陽大学日本学国際比較研究所・BK21日本文化研究特性化チーム共同主催国際シンポジウム「東アジア近代都市空間の表象」資料集

      巻: 単発 ページ: p7-9

  • [学会発表] 幕末の日本を変えた坂本龍馬2012

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 学会等名
      NHKラジオ第2「文化講演会」
    • 発表場所
      NHKラジオ第2
    • 年月日
      2012-12-30
    • 招待講演
  • [学会発表] 坂本龍馬の元治元年

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 学会等名
      歴史に学ぶ楽問塾
    • 発表場所
      NPO法人国際生涯学習文化センター(大阪)
    • 招待講演
  • [学会発表] 東アジアの一大都市 “Osaca”から考える

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 学会等名
      漢陽大学日本学国際比較研究所・BK21日本文化研究特性化チーム共同主催国際シンポジウム「東アジア近代都市空間の表象」
    • 発表場所
      漢陽大学(ソウル)
    • 招待講演
  • [学会発表] 持続可能な外交へ―幕末期、欧米外交官の将軍拝謁儀礼から

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 学会等名
      日文研共同研究会「徳川社会と日本の近代化―17~19世紀における日本の文化状況と国際環境」
    • 発表場所
      国際日本文化研究センター(京都)
  • [学会発表] 近代外交への模索―幕末の外交儀礼から

    • 著者名/発表者名
      佐野真由子
    • 学会等名
      ブカレスト大学日本研究センター主催国際シンポジウム The Quest For Modernity in Japan
    • 発表場所
      ブカレスト大学(ブカレスト)
  • [図書] 日本の近代化とプロテスタンティズム2013

    • 著者名/発表者名
      上村敏文・笠谷和比古編
    • 総ページ数
      440
    • 出版者
      教文館
  • [備考] 国際日本文化研究センターHP

    • URL

      http://www.nichibun.ac.jp/research/faculty/staff1/sano.html

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公開日: 2014-07-24  

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