本研究では、幕末期、欧米諸国の外交官が将軍に拝謁した際の儀礼様式が、幕府の試行錯誤の中で整備された経緯を検証した。日本および諸外国の一次史料で事実関係を追跡するとともに、他の近世武家儀礼一般、また、料理、服飾等、文化史各要素の研究成果を取り入れて分析を進めた。 結果、安政4(1857)年から慶応3(1867)年までの範囲で展開した「幕末外交儀礼」の全体像を捉え、その式次第が、朝鮮通信使聘礼の伝統を土台に段階的に成立した過程を把握するに至った。これは、明治維新後、本格的な西洋化を見る以前の、見落とされてきた外交儀礼の実態であり、この前後にわたる日本外交の連続/断絶について再考を促すものである。
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