研究課題/領域番号 |
23530211
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 教孝 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80334598)
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研究分担者 |
尾山 大輔 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (00436742)
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キーワード | サーチ理論 / 失業 / 国際競争 / 金融市場 |
研究概要 |
平成24年度は、23年度に引き続き「財市場と労働市場の相互フィードバックと戦略的補完性」という副テーマを追求した。労働市場における失業問題を扱うためにサーチ理論を導入し、財市場については製品差別化による独占的競争市場を考え、さらにそこに企業ごとの生産性に関する異質性を仮定した。産業の大きさを決める要因として起業と労働に関する職業選択を導入した。 起業を選択したとしよう。その場合、まずは差別化された財を開発し、その財を生産するために労働市場で労働力を確保し、生産した財を自国と他国の消費者に販売する。労働市場は摩擦的であるため、雇用目標に合わせて採用活動を行い、賃金は交渉によって決定される。また、販売価格は独占的競争企業としてマークアップ型の価格設定を行う。すると、労働市場の摩擦が生産コストを引き上げ、それが財市場における企業の競争力に影響をあたえることとなり、国のレベルでは、国際競争力に大きな影響を与えることになる。 そのような構造を持つモデルを使って、本研究で特に着目したのは、グローバル化や貿易自由化によって国際競争が激化していくにつれて、産業は拡大するのか、それとも縮小するのか、である。国際貿易理論において、Home Market Effect(HME)と呼ばれる効果が知られているが、その基本的結果は、人口の大きな国の産業は、小さい国の産業よりも、その人口比率よりも大きな比率で大きくなる、というものである。本研究では、小国の労働市場の摩擦度が大国のそれよりも十分に小さいならば、HMEの逆、つまり、国際競争の結果、小国の産業が大国の産業よりも大きくなることも十分に可能であることとを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の24年度の計画は「財市場と労働市場の相互フィードバックと戦略的補完性」という副テーマに関する研究を完了して「金融市場における戦略的補完性とレジームシフト」という次の副テーマに本格着手する計画であった。第一の副テーマについては、研究報告や論文執筆の段階を終え、現在国際ジャーナルに投稿準備中であり、おおむね順調に進展していると判断できる。また、第二の副テーマについても、24年度中に分析が進んでおり、こちらもおおむね順調だと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは第一の副テーマに関する論文を国際ジャーナルに投稿する計画である。それに並行して、第二の副テーマに関する研究を25年度中に完了し、こちらも国際ジャーナルに投稿することを目標としたい。研究代表者も分担者も多種多様な業務で多忙を極めており、本プロジェクト遂行のための時間を確保することが最大の課題である。その対応策として、研究打ち合わせについては、大きく時間を要する出張の回数を確保するのが困難であると予想されるため、そのかわりにインターネットを利用したテレビ電話による会議など、研究打ち合わせの効率化を図る計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度未使用額の発生理由:24年度末に購入した統計処理ソフトウェアを、インターネット経由で英語版を購入することで、事前に調べていた料金(生協価格)よりも大幅に安く入手することに成功した。24年度末に計画していた国内出張について、共同研究者との日程調整がうまくいかず、打ち合わせ(1回分)を25年度に延期した。 未使用額の使用予定:研究打ち合わせのための旅費として利用予定。
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