平成25年度は、23年度、24年度に引き続き財市場と労働市場の相互フィードバックに関する研究を行った。労働市場における失業問題を扱うためにサーチ理論を導入し、起業と労働に関する職業選択を導入することで、「職業間所得格差」について分析を行った。 平成24年度の研究では、グローバル化や貿易自由化によって国際競争が激化していくにつれて、産業は拡大するのか、それとも縮小するのか、について主に分析を行ったが、25年度には、単に全体として産業や所得が拡大するかどうかを超えて、格差についての分析を本格化させた。具体的には、本研究において開発中の理論モデルの枠組みの中で国際競争に起因する所得格差を発生させ、そこからローレンツ曲線とジニ係数を計測したのである。その研究成果は「Labor Market Frictions and Entrepreneurship in a Global Economy」という共著論文にまとめ、本研究期間中に研究会や学会において発表した。更に、本研究の枠組みを利用して労働市場の景気変動の分析も進め「Employment and Hours over the Business Cycle in a Model with Search Frictions」という論文にまとめた。 本研究はその分析手法において「サーチ理論」ならびにその周辺分野からの影響が強いため、サーチ理論研究会という研究グループとの連携を行いながら研究を実施した。平成25年8月にSummer Workshop on Economic Theory (SWET)という1週間規模の研究集会のうち1日をサーチ理論研究をテーマとして開催し、本研究に関連する研究者を招聘して議論を行った。また平成26年1月にも半日規模の研究集会を開催し、本研究テーマに関連する研究者を招聘して研究の報告と議論を行った。
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