本研究は、取引機会に制限があるという意味で「摩擦的な市場」を分析可能なサーチ理論というアプローチを用いて、財市場と労働市場の間の相互作用を明らかにするための理論研究を行った。財市場も労働市場も不完全競争になっており、さらに企業の生産性に分布があるような環境をモデル化し、そのモデルを用いて市場規模と摩擦度の異なる2国間で貿易自由化が進んだ場合の産業構造への影響を分析した。貿易自由化の効果は単調ではなく、相対的な市場規模と摩擦度に応じて貿易自由化の効果が全く異なることが判明した。職業間の所得格差は、貿易自由化によって産業が拡大した国において拡大するという理論的予測を得た。
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