研究課題/領域番号 |
23530216
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
西村 直子 信州大学, 経済学部, 教授 (30218200)
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キーワード | ミクロ経済学 / 実験経済学 / リスク選好 / 社会的選好 |
研究概要 |
研究期間2年目であるH24年度では,昨年度に引き続き,社会的選好の視点からリスク態度の理論的検討を行った。効用は起こりうる「状況(事象)」とそれに付随する「確率」の関数として設定されるが,H23年度までは多変量確率分布の考え方を応用して,自分の所得と相手の所得からなる「状況」に社会的選好の視点から検討したが,H24年度には確率部分に関して社会的選好視点を導入するという新たな視点を加味して,検討を進めた。 H23年度実施した予備実験は,自分と他者との相対的所得関係を一定にしたまま所得リスクを導入し,社会的選好の類型のひとつである「不平等回避」型の選好がリスク選好に及ぼす影響を排除するデザインの下で実施した。H24年度では,所得のリスク分布において,所得局面と損失局面との対比に着目し,対比実験を行った。同じ確率であっても,この2つの局面で実験参加者のリスク選択に差がでることに着目し,理論研究で検討した確率部分に関する新たな視点から検討の必要性が,データによっても確認されたことになると解釈できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度末に所属学部研究棟の耐震工事計画が採択されたため,研究棟全体の仮移転を実施しなければならなくなり,実験室もそのため使用できなくなった結果,H24年度における実験研究に大きな支障が生じ,思うように進めることができなかった。大学内の施設には仮の実験室を設置するような空きがないため,実験研究が耐震工事完了(H25年10月予定)まで物理的にまったく実施できない。このため,H25年度研究計画にはさらなる大幅な遅れが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に新たに着目した(「研究実績の概要」に記載)方向で,引き続き理論研究を継続する。また,H25年度10月以降に予定されている耐震工事完了後,まず実験室を再度設置したうえ,実験が可能になるよう整備する作業を行う必要がある。H25年度中に本実験が開始可能であれば,理論研究の進展に基づいて新たな実験デザインの検討と実験実施を行いたい。新たな実験デザインには,参加者の社会的選好側面の確認のために行うリスクを伴わないゲーム的場面の実験を検討してきたが,それに加えて,他者の所得を伴わないリスク場面における,参加者の期待効用理論とは整合的でない効用の確認実験もとりこんでいきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
理論・実験研究両面に関する資料収集を継続する。予備的考察の報告機会を見つけ,助言を求めることも進めたい。そのための資料費及び旅費等の支出が見込まれる。また,学内の耐震工事のため実験実施に大きな支障が生じることが予想されるため,実験に支出できる部分は限られるだろうと思われる。そのため研究プロジェクトスタート当初に見込んだ実験費用の半分以上は次年度以降に繰り越すことを検討したい。ただし実験研究補助者への謝金等については,ある程度の支出は予想される。 一方,これまで実験に使用してきたPCは,実験用ソフトの関係から,WindowsXPをOSとする機種で整備してきたが,同OSのサポートが停止されるため,全実験用PCのOSを入れ替える必要が生じている。このための支出が予想される。
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