研究課題
理論研究:研究期間3年目であるH25年度では,昨年度に引き続き,社会的選好の視点からリスク態度の理論的検討を行った。効用は起こりうる「状況(事象)」とそれに付随する「確率」の関数として設定される。プロジェクトの開始時には,「状況」を評価する効用理論部分に社会的効用の視点を導入したが,H24年度の半ばから効用の確率部分に関して社会的選好視点を導入する方向に研究方針を変更して検討を開始した。H25年度もその検討を継続した。しかし,H25年度に所属学部の耐震工事が実施されたため,新たな理論的分析に関する予備実験を実施できなくなり,理論分析の進展にも支障が生じた。その中で,シンガポール国立大学のChew Soo Hong教授を日本に招へいし,リスク理論研究の一部に関して共同で研究を開始させることができた。そこでは,社会的選好を惹起する協力的場面において,協力を達成するために敢えてリスクをとる可能性に新たに着目し,協力への誘因が確率認知を変形させる可能性について検討している。実験研究:H23年度・H24年度と実験を実施してきたが,H25年度は所属学部の耐震工事が実施され,実験研究は事実上不可能になった。H25年度後期,改修後の建物に再移転した際,実験室は元の形には再現されなかったため,まず新たな実験室の再整備に着手した。再整備作業はまだ継続中である。さらに,経済実験用ソフトがWindowsXP上以外ではバグがあったことから,実験用PCのOSは全てXPであったところ,H25年度中にXPのMicrosoftによるサポートが終了したため,全ての実験用PCのOSを入れ替える作業を実施し,次年度実験実施に向けての準備作業を行った。
4: 遅れている
理論分析に関しては,社会的選好のファクターをリスク姿勢分析に取込む方法について,新たな視点から研究を進めることができた一方,実験研究については,H25年度の所属学部研究棟の耐震工事のため,分析を進めることができなかった。したがって,達成度は遅れているとした。
理論研究については,引続き分析を進める。実験研究については,次年度にはまず,H25年度に実施できなかった,進展した理論分析に基づく予備実験を実施する計画である。また,それに引き続く本実験についても,実験デザインの工夫変更や実施規模について検討を進めたい。
H25年度の所属学部の耐震工事のため,計画通りの実験研究を行うことができなった。また,それに基づく理論改善作業にも支障が生じた。このため,H25年度中に勧められた新規理論分析に基づいて,次年度にデザインを新たにした予備実験を実施することにしたため,次年度使用額が生じた。H25年度で進めることができなかった,新規理論分析に基づく新しいデザインの予備実験を実施する。そこで得られた知見を基づいて,さらなる理論分析を進展させ,デザイン等に更なる改善を施した本実験を計画している。また,国内外における学会等での発表のための旅費等も予定している。加えてH25年度に開始したChew教授との共同研究のための旅費等も予想される。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
西條辰義・清水克己編『実験が切り開く21世紀の社会科学』,第13章,勁草書房.
巻: 1 ページ: 57-172
Advances in Behavioral Economics and Finance, Ikeda, S.; Kato, H.; Ohtake, F.; Tsutsui, Y. (eds.), Springer
巻: なし ページ: 未定