研究課題/領域番号 |
23530216
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
西村 直子 信州大学, 学術研究院 社会科学系, 教授 (30218200)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | ミクロ経済学 / 実験経済学 / リスク選好 / 社会的選好 |
研究実績の概要 |
理論研究:H25年度末から開始した,シンガポール国立大のChew Soo Hong教授との共同研究を継続した。リスクの評価関数は,確率に関する評価と結果に関する評価に分けて考えるのが通常であり,結果に関する社会的選好の導入が本研究の出発点であったが,上記共同研究では,他者の関与が確率の評価にも影響を及ぼす可能性について着目してスタートさせた。この点は,他の既存研究に例を見ない新規な発想であり,特に,他者の関与がゲーム的要素を含む場合に注目して理論的検討を継続した。
実験研究:H26年度は,11の項で説明する事情のため,実験室を再構築・再整備を実施し,実験実施の環境整備を完了するにこぎつけた。そのため,H26年度には新しい仮説検証のための予備実験を実施することができた。この予備実験結果と,新たな理論仮説の発想に至る際に手がかりとなった実験結果に基づき,京都大学で開催された「実験経済学ワークショップ」で招待報告を行った。そこにおいては,個人場面での選択実験では,平均値を中央にして左右対称な分布へ実現値を拡散したリスクに対して回避的な行動をする一方で,ゲーム的な要素がある場面において同様のリスクが生じるような状況を構築し,そこでは同一の被験者がむしろリスクを進んでとることが観察されている。この行動は,実験全体において統一的に観察され,行動パターンとして存在すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論分析に関しては,昨年度に方向修正があったものの,さらに新視点を導入する方向への修正であり,研究の質は向上したと判断できる。
実験研究は本プロジェクトを1年延長することが許可されたため,H25年度の耐震工事のために消滅した実験室を,H26年度中に再構築し,実験研究環境を回復することができた。これにより,当初予定の年二回の実験を実施することができた。このデータ結果をさらに理論分析の進展に役立たせることができる。
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今後の研究の推進方策 |
理論研究については,引き続き新たな視点に基づいて検討・分析を進める。実験研究については,H26年度末に実施した予備実験の分析を急ぎ,デザイン等の改善を付して,本実験へと進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
H25年度の所属学部における耐震工事のため経済実験用の実験室が閉鎖され,研究進行に支障が生じたため次年度使用額が生じた。その後プロジェクト期間の1年延長を申請し,許可された。
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次年度使用額の使用計画 |
さらなる理論分析の進展を図り,それに基づく新たな実験仮説に応じた実験デザインを構築し,さらなる実験を実施する。また,国内外における研究報告の機会を求める予定であるため,その旅費等にも充当する。
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