研究課題/領域番号 |
23530217
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小佐野 広 京都大学, 経済研究所, 教授 (90152462)
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キーワード | ノンリコース・ファイナンス / プロジェクト・ファイナンス / 証券化 / レバレッジド・バイアウト(LBO) / ホールド・アップ問題 |
研究概要 |
前年度に得られた結果をもとにして、平成24年度においては,前年度の一般的なモデルでの研究成果を基礎にした上で,証券化・プロジェクト・ファイナンスにおける固有の問題を解明した。とくに、証券化の問題に関して,そこでの期間不一致の問題,すなわち,長期の投資(住宅ローン貸出等)を行っているのに資金調達は短期証券で行っているというようなミスマッチが,経済主体の合理的行動の結果として出てくること,また,それがスポンサー銀行の情報投資(モニタリング)には,マイナスの効果を持つことを明らかにした。この結果は,リーマン・ショック後におきた金融危機という現象を理解する上で重要である。というのは,リーマン・ショックは,短期の証券化商品(asset-backed commercial paper)を発行して,長期の貸出資産への投資を行っていた投資銀行やそれと似たような投資銀行的業務を行う商業銀行が,証券化商品市場や短期のレポ市場等で資金調達できなくなった結果,生じたものだからである。一方,プロジェクト・ファイナンスにおける政治リスクの問題は重要な問題であるので,理論的にこれをうまく取り扱うようなインセンティブ・スキームの構築を試みたが,これは,まだ,研究途上にある。その代わり,ホールド・アップ問題を使ってプロジェクト・ファイナンスを説明するモデルをさらに精緻化して,負債が不履行になった場合に売り手と買い手の期首契約が同様に不履行になるケースに拡張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
証券化の問題に関して,そこでの期間不一致の問題,すなわち,長期の投資(住宅ローン貸出等)を行っているのに資金調達は短期証券で行っているというようなミスマッチが,経済主体の合理的行動の結果として出てくることを明らかにしたことは,大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
企業買収,とくに,LBOやMBOがどのような企業で行われるのかを調べることは重要な作業であり,そのような理論モデルの構築に進む予定である。また,プロジェクト・ファイナンスのモデルに関しても,引き続き,理論化を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の英語添削に25万円,海外(オーストラリアなど)での研究打ち合わせ・意見交換・資料収集に40万円,タブレットやソフトウェアの購入などに15万円程度,使用する予定である。
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