研究課題/領域番号 |
23530218
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中嶋 智之 京都大学, 経済研究所, 教授 (50362405)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / リスクシェアリング / 非完備市場 |
研究概要 |
平成23年度は、以下のプロジェクトについて研究を行った。(1) 非完備市場における最適課税政策、(2) 金融機関に関わるシステミックリスクのaggregate economyに対する影響、(3) 金融市場の不完全性がもたらす国債価格とインフレーションに対する影響、(4) ブータン王国におけるリスクシェアリングに関する調査。 (1) に関しては、昨年度までの研究の拡張として、労働所得に対する非線形課税を考慮するための準備を行った。これはそれまでに線形課税のケースで得られた結論の頑健性を確認する意義がある。この点については平成24年度にも引き続き研究を行っていく予定である。 (2) については、動学的一般均衡理論のフレームワークにおいて、systemic bank runsが起こるモデルの構築とその理論的、数量的分析を行った。2007年から2008年におこった世界金融恐慌の本質的な部分は、repo marketにおいて生じたsystemic bank runsとみなすことができるため、そのような性質をもったDSGEモデルの構築は重要な意義を持つ。 (3) については、国債の空売り規制がある状況で、金融機関など一部の経済主体がleverageを用いて国債の購入をするような理論モデルを構築し、そのような状況では、仮にsovereign debt crisisが現実的な可能性としてあったとしても、国債価格は高止まりし、インフレ率は低位にとどまり続けることを示した。実際、我が国では国債価格が高く、インフレ率も低い状態が続いているが、これは決して、我が国がsovereign debt crisisと無縁であることを保証するものではないことを示している。 (4) については、ブータン出張を行い、研究への準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において執筆・改訂した論文は以下のとおりである。(1) "Optimal taxation and constrained inefficiency in an infinite horizon economy with incomplete markets." (2) "Constrained inefficiency and optimal taxation under uninsurable risks." (3) "Global liquidity trap." (4) "Making the case for a low intertemporal elasticity of substitution." (5) "Systemic bank runs in a DSGE model." (6) "Why prices don't respond sooner to a prospective sovereign debt crisis." それぞれの論文は、日本国内や国外における国際的なコンファレンスにおいて発表するとともに、国際査読誌へ投稿済みか、投稿に向けた準備中である。さらに、それぞれの研究を発展、深化させたプロジェクトも進行中である。 これらの点から、研究はおおむね順調に進んでいると評価できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、今後は以下の4つのテーマについて研究を行っていく。(1) 非完備市場における最適課税政策、(2) 金融機関に関わるシステミックリスクのaggregate economyに対する影響、(3) 金融市場の不完全性がもたらす国債価格とインフレーションに対する影響、(4) ブータン王国におけるリスクシェアリングに関する調査。 これらのテーマについて、以下のように研究を推進していく予定である。(1) 京都大学経済研究所の梶井厚志教授、European University InstituteのPiero Gottardi教授との共同研究を行う。(2) 一橋大学経済研究所の小林慶一郎教授との共同研究を進める。(3) Federal Reserve Bank of AtlantaのRichard Anton Braun博士との共同研究をするめる。(4) 慶應大学の大垣昌夫教授との共同研究を進める。 それぞれのテーマについて書かれた論文は、国内外の国際的なコンファレンスで随時発表を行い、様々な研究者との討論を通じて、論文の質を高めていくものとする。最終的には、評価の定まった国際的な査読誌へ発表することを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
いくつかの国際コンファレンスで論文を発表するとともに、該当分野で活躍する他の研究者と意見交換を行う。そのための旅費として、80万円ほどを使用する予定である。残りは、数値計算のためのソフトウェアや関連分野の書籍購入に使用する。
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