最終年度も、昨年度から引き続き、以下のプロジェクトについて研究を行った。(1) 非完備市場における最適課税政策、(2) 金融市場の不完全性がもたらす国際価格とインフレーションに対する影響、(3) 金融機関に関わるシステミックリスクのaggregate economyに対する影響、(4) Debt restructuringとdebt overhangの動学的一般均衡分析、(5) 安全資産の供給が過少なケースにおけるバブルの発生について。 (1)については、労働者の労働生産性が外生的に決まるケースを2期間モデルで分析した論文がJournal of Public Economic Theoryに掲載されることが決まった。労働者の人的資本蓄積の結果として労働生産性が決まるケースにおける最適化税政策を無限期間で考察した論文については、国際的な査読誌から再度、revise and resubmitの要請が来たため、それに応じて改訂し投稿を行った。(2) については、空売り制約を緩めた場合の分析を行うとともに、モデルをより一般化し、国際的な査読誌への投稿にむけ改訂中である。(3)については、国際的査読誌より、revise and resubmitの要請が来たため、現在改訂を行っている。(4)については、基本モデルを拡張し、数量分析を行った。(5) については、成果をまとめた論文がJournal of Mathematical Economicsに掲載された。 研究期間全体では、金融政策の国際協調や民間経済におけるリスクシェアリングが限定的である場合の財政政策の効果、そして資産市場が不完全な場合の資産価格バブルや金融危機の発生などについて、興味深い結果が得られた。
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