研究課題/領域番号 |
23530219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80455708)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 経済理論 / 意思決定論 / ミクロ経済学 / 行動経済学 |
研究概要 |
1.投稿中の「時間と不確実性の両者を捉える空間上で「消費分散選好」を定義する新たな公理形を導く研究」を改訂し、レフリー付き学術雑誌「Theory and Decision」への掲載を確定した。 本研究では、不確実性に対する回避度を表わす「効用平準選好」を記述したモデル(「Maxmin期待効用関数」)と、時間軸上の「消費分散選好」(効用の高い消費と低い消費を繰り返す傾向)を表わす「損失回避型」割引率モデルとを同時に満たす関数表現モデルを導出した。特に、時間軸上で定義された「消費分散選好」という概念と不確実性を表わす空間上で定義された「効用平準選好」という概念を統一的に公理化できることを示した点が、意思決定論の分野における理論的貢献と考える。また、本研究は「消費分散選好」の投資理論への応用を検討するための基礎研究に当たる。(発行年と巻、ページは未定。発行が確定した年度の雑誌論文として次年度以降報告予定) 2.「非「単調増加性」を「消費分散選好」と整合的な形で公理化する研究」を無限期間モデルに応用し、その成果をレフリー付き学術雑誌「Economics Letters」に掲載確定した。 非「単調増加性」とは、ある期の消費を増やすことで逆に消費者の満足度が下がる現象を指す。本論文では、消費者が強い「消費分散選好」を示す場合にこの非「単調増加性」を満たすことを公理体系で示した先行論文("Modeling Nonmonotone Preferences: The Case of Utility," 若井克俊、Journal of Mathematical Economics, 2011)を無限期間に拡張した。特に、非「単調増加性」をとらえた「消費分散選好」が無限期間を扱う投資理論や成長理論まで幅広く応用できることを示した点が意思決定論の分野における理論的貢献である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「消費分散選好」を投資理論へ応用するための基礎研究は順調に進んでいる。また、「消費分散選好」をゲーム理論へ応用する研究は計画通り進行中であり、本年度中に論文としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.「消費分散選好」をゲーム理論へ応用する研究では、研究対象を2企業寡占モデルに限定することにより、よりシャープな結果を導出することを目指す。2.「消費分散選好」の投資理論への応用研究では、成長理論への応用や、危険回避度の変化の分析、最適ポートフォリの変遷の分析などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は「消費分散選好」の投資理論への応用を可能にするための基礎研究を集中的に行った。このため、シミュレーション用のコンピューターとソフトウェアの購入、および、応用研究の情報収集のための海外出張等を次年度以降に行うこととし、研究費を884058円繰り越した。本年度は、繰り越した研究費を当初の予定通りにコンピューター等の物品の購入や海外出張に使用する予定である。また、本年度支給分の120万円は当初の予定通りに、学会参加や研究成果発表のための国内・海外出張、ならびに、論文の英文校正等に使用する予定である。また、次年度支給分の120万円も当初の予定通りに、学会参加や研究成果発表のための国内・海外出張、ならびに、論文の英文校正等に使用する予定である。
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