研究課題/領域番号 |
23530219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80455708)
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キーワード | 経済理論 / 意思決定論 / ミクロ経済学 / 行動経済学 |
研究概要 |
1.日本経済学会2012年度春季大会で「Intertemporal Utility Smoothing: Theory and Applications」というタイトルの招待講演を行い、その原稿をレフリー付き学術雑誌「The Japanese Economic Review」へ掲載した。 本招待講演では、「消費分散選好」(効用の高い消費と低い消費を繰り返す傾向)を捉える理論モデルを紹介したのち、研究代表者の提案したモデル(「A model of Utility Smoothing」若井克俊, Econometrica, 2008)を用いて経済成長モデルを分析した。特に、強い「消費分散選好」を持つ経済主体は労働集約的な経済では毎期同じ量を消費することを示した点が理論的貢献と考える。また、本研究は、「消費分散選好」の投資理論への応用例の一部に該当する。 2.「消費分散選好」に関する新たな公理系を提案し、その成果をレフリー付き学術雑誌「Economics Letters」に掲載した。 研究代表者の提案したモデル(「A model of Utility Smoothing」 若井克俊, Econometrica, 2008)に用いられた公理系は、関数表現モデルの導出を容易にするために消費にリスクのある状況を仮定している。しかし、「消費分散選好」はリスクのない状況での意思決定を表わしているので、提唱されている公理系の一部と整合性がない場合がある。本論文では、消費リスクのない状況下で「消費分散選好」を公理化した。特に、Koopmans(1960)によって提唱された異時点間の意思決定理論「Recursive Utility」の特殊形として関数表現モデルを導出している点が意思決定論の分野における理論的貢献である。また、本研究は「消費分散選好」の応用研究のための基礎研究に当たる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「消費分散選好」を投資理論へ応用するための基礎研究は順調に進んでいる。また、「消費分散選好」をゲーム理論へ応用する研究は昨年度に論文としてまとめる予定であったが、より良い結果が得られたため本年度に繰り越して研究を続けることにした。
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今後の研究の推進方策 |
1.「消費分散選好」をゲーム理論へ応用する研究では、研究対象を2企業寡占モデルに限定することにより、よりシャープな結果を導出することを目指す。 2.「消費分散選好」の投資理論への応用研究では、リスク回避度と異時点間代替効果との関係を分析する新たな公理系の研究を完成させた後、「消費分散選好」の度合いが強くなるとどのように貯蓄が変化するかを研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、前年度に繰り越した研究費を当初の予定通りにコンピューター等の物品の購入や海外出張に使用した。また、昨年度支給分に関しても、当初の予定通り学会参加や研究成果発表のための国内・海外出張、ならびに、論文の英文校正等に使用した。一方、研究成果を論文にまとめることに予定以上の時間を費やしたため、一部の学会に参加することを次年度に持ち越すことにし、研究費を411572円繰り越した。本年度は、繰り越した研究費を予定通り学会参加や研究成果発表のための国内・海外出張に使用する予定である。また、本年度支給分の120万円は当初の予定通りに、学会参加や研究成果発表のための国内・海外出張、ならびに、論文の英文校正等に使用する予定である。
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