研究課題/領域番号 |
23530220
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三野 和雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (00116675)
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キーワード | 構造変化 / 経済成長 / 非相似選好 / 生産性格差 / 開放経済 |
研究概要 |
平成24年度は主として以下の2つのトピックについて研究を行った。まず家計の選好の非相似性が各消費財に固有の外生的習慣形成により発生するという仮説のもとにモデルを設定し、理論分析と数量的評価を行った。基本モデルは平成23年度の研究で作成していたが、本年度はモデルをより一般化し、数量的な分析も行い、経済成長と産業構造の変化の関係についてより現実説明力が高い分析結果を得た。この研究成果については論文(Takeo Hori, Masako Ikefuji and Kazuo Mino, “Conformism and Structural Change" 2012)にまとめ、学会やセミナー等で報告した後、現在査読誌に投稿中である。 第2のトピックは、国際貿易と産業構造の変化の関係である。このトピックについても平成23年度から継続して検討しているが、以下の2つの論文をまとめることができた。1.Kazuo Mino and Yunfang Hu,“Patterns of Trade and Structural Change in a Small-Open Economy”。 2.Kazuo Mino and Yunfang Hu, ”Trade Structure and Belief-Driven Fluctuatios in a Global Economy”。論文1.は小国開放経済の構造変化と貿易パターンの関係について一般性の高いモデルで分析し、既存研究では明らかにされていない結果を得た。この論文は各種のセミナー、学会等で報告をして修正を行い、現在投最終稿の投稿準備中である。論文2.では2国動学モデルを用いて貿易と世界経済の構造変化の関係を検討した。この論文も学会等で報告した後投稿したが、最近査読誌への掲載が決まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
選好の非相似性と構造変化の関係については、平成23年度の研究において基本的な分析のフレームワークを設定し、24年度には基本モデルを一般することにより、現実のデータの説明力をより高めることができた。この結果は、23年度に基本モデルを作り、24年度に一般化するという当初の研究計画に沿っている。また研究成果を学会やセミナー等で得たコメントに基づき改善し、査読誌に投稿する段階までもっていけたことも、当初の計画に沿っている。 開放経済の構造変化の問題についても、平成23年度に検討した小国開放経済モデルをより完成度の高いかたちに改善し、査読誌に投稿可能なかたちにすることができた。さらに2国モデルについては、完成論文を査読誌に投稿して採択された。投稿先のJournal of International Economics は国際経済学の分野におけるトップ誌であり、経済学全分野におけるインパクト・ファクターのランキングでも10位以内にある。したがって研究成果の一部は、国際的にも一定の評価を得たと判断できる。この結果も当初の計画に沿うものである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度なので、これまでの研究結果の改善とともに、当初の研究計画に掲げていたがまだ明確な研究結果を得ていない金融市場の不完全性と構造変化の関係について研究を進める。具体的には、担保制約の存在を前提にした閉鎖経済および開放経済のモデルを設定し、これまでの研究で行ってきた選好の非相似性と貿易パターンが経済の構造変化に与える影響を再検討する。金融市場の不完全性の効果については、2008年秋のリーマンショック以降研究が急増しているが、現在のところ景気循環への影響を調べる研究が大半である。本年度の研究では、最近の研究成果を参考にしつつ、既存研究があまり注目していない長期的な構造変化と金融市場の不完全性の関係を検討する。過去2年間と同様に、研究成果を論文のかたちにまとめ、セミナーや学会で報告をしてコメントを受けた後、専門の査読誌への投稿ができるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.旅費 800千円:共同研究のために海外の研究機関に滞在するための旅費・滞在費、および海外で開かれる学会に参加するための旅費 2.謝金 600千円:大学院生をRAとして雇用するための費用、および情報提供者への謝金 3.消耗品 30千円:書籍、およびコンピュータ・ソフトの購入
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