研究課題/領域番号 |
23530221
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宜名真 勇 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (30127758)
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研究分担者 |
小瀧 光博 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (00194564)
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キーワード | 単位根検定式 / トレンドの構造変化 / 構造変化ダミー / ブートストラップ法 / BCa信頼区間 / 生産平準化 / 在庫投資 / ラグ演算子 |
研究概要 |
本研究の目的の第1の問題点、即ち、先進諸国と途上諸国における在庫投資の生産平準化現象に関する相違についての検証に関しては、生産量と販売量の分散の比率を計測する、従来の点推定の方法に対して同比率の区間推定を行う方法により、G7諸国に関する計測を終え、ディスカッション・ペーパーにまとめ、現在英文ジャーナルに投稿準備中である。他の諸国、特に途上諸国について引き続き推定を続けているが、本研究の基本的枠組みの基礎である、時系列データの構造変化を伴うトレンド定常性が、標本期間の制約やその期間内におけるデータの推移によっていくつかの途上諸国については妥当しない場合が見受けられるため、生産量と販売量を階差定常と想定することが適切である場合についてもbootstrap法に基づく区間推定を行うためにプログラムの一部を修正する必要があり、その作業も行いつつある。尚、確定的トレンドの構造変化を考慮した単位根検定に非確率的な季節ダミー変数を含めても検定の臨界値は変化しないという命題の証明は第1の研究目的の一部であるが、その導出は終了している。 また、時系列データが階差定常性を示す場合のプログラムの修正は、第2の研究目的における統計的分析を行う場合にも有用性を発揮すると考えられる。即ち、1985年頃を境に先進諸国におけるGDPボラティリティーが低下したという計測結果に基づいてその原因を探求する研究が行われているが、そのうちの販売量の自己相関が低下したとする考え方を検証する本研究にとってGDPと販売量の上記期間以後の分散比の信頼区間を計測する必要があり、このような限定された期間についての時系列データのトレンド定常性を確認することに困難が伴う場合、上記の階差定常性を前提にした区間推定を行うための修正されたプログラムが必要となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の第1の目的を達成するために、まずデータが比較的によく整備されているG7諸国に対して本研究の基本的枠組みを用いた推定を行った。計測の過程では、有意な検定結果を得る上で標本期間の分割や確定的トレンドの内生的構造変化点の個数について多くの可能性が存在しており、いろいろな組み合わせについて順次検定と推測を行った上で途上諸国のデータを用いた計算を行った。先進諸国と途上諸国の間に在庫投資の生産平準化現象に異なる傾向が存在することを見いだしたのはFukuda and Teruyama(1988)であるが、同文献が計測対象にした途上諸国のデータを分析する場合、トレンド定常というよりも階差定常と見なす方が適切と考えられる事例がいくつか観察されることにより、その場合に生産量と販売量の分散比のBCa信頼区間を推定しうるようプログラムの一部修正が必要となったため、またこのために修正したプログラムを第2の研究目的のための計測の一部に用いることができる可能性があるため、研究実施期間の延長が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
既述の目的のためのプログラム修正と、いくつかの発展途上諸国の時系列データの定常性を検証する計算を実施し、NIESおよびBrics諸国と他の途上諸国のグループのそれぞれについて生産平準化(ないし反平準化)の傾向を先進諸国と対比する。また、諸文献で報告されている1985年半ば以降の期間において先進諸国のGDPボラティリテイーが低下している現象の原因の探求における需要ないし販売量の自己相関の度合いの減少の説明力を実証的に分析する。後者の分析においては限定された観察期間における、GDPと販売量の分散比の信頼区間を計測するが、その場合上述した修正されたプログラムを用いた推定も併せて行うことを想定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究目的のうちの一部について、データの統計的特質を分析した結果、途上諸国の一部について階差定常性を考慮した信頼区間の計測を行えるようプログラムの修正が必要となり、研究目的の完了後における国際学会、等における報告を分析完了後まで延期することが必要となった。 研究目的完了後における国際学会等での報告に関連した旅費・学会費等と英文ジャーナルへの投稿に際して英文チェックのための業者への支払いに充てることを計画している。
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