通常は自由貿易主義の思想は、第一次産業、第二次産業と第三次産業がバランスよく国内で共存することを志向する均衡的国民経済主義の考え方とは対立するものと考えられている。つまり、均衡的国民経済主義は、もっぱら保護主義と整合的な思想として捉えられてきたと言える。本研究は、自由貿易主義思想の母国であるイギリスの思想状況を対象として、こうした基本的通念の再考を迫るものである。つまり、イギリスの左派自由主義の伝統においては、熱烈な自由貿易主義思想とあわせて、特に製造業を重視する均衡的国民経済主義の思想が、保護主義陣営にも増して強力に維持されていたのである。 以上の点を、各種の論説、共著書を通じて明らかにした。
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