研究課題/領域番号 |
23530241
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
江里口 拓 西南学院大学, 経済学部, 准教授 (60284478)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | イギリス福祉国家 / LSE / 社会市場 / 行政学 |
研究概要 |
2011年度は,LSE設立者であるウェッブ夫妻の経済思想を,あらためて広い歴史文脈の中に位置づける作業から出発した。スウェーデンのレーン・メイドナー・モデルと比較した意味でのケインズ=ベヴァリッジ型イギリス福祉国家の特殊性を,国際均衡重視(スウエーデン)vs内需重視政策(イギリス)との対立と整理したことで,戦後イギリス福祉国家における基本問題,すなわち所得政策とポンド防衛の必要性の存在に着目することができた。基本的にこの構図は,1970年代まで保持されたとみなしうるであろうから,LSEの福祉経済思想の背景として,まず前提をこのように置くべきであることに気づくことができた。 さらに,経済思想史については,ウェッブ夫妻を,イギリス経済思想史の流れの中で,アルフレッド・マーシャル,ピグーのケンブリッジ学派,アシュリーなどのイギリス歴史学派との比較を行った。さらに,J.A.ホブソン,ホブハウス,リッチー,ボザンケらのニューリベラリズムの福祉思想についても,外観的な比較考察を行うことで,LSEの,R.ティトマス,T.H.マーシャルにおける社会理論の素地(楽観的社会進化論)についての感触を手に入れることができた。そのことで,19世紀のT.H.グリーンの理想主義思想の継承の仕方に,ニューリベラリズムにおける自由主義的な問題軸ではなく,LSEにおける福祉国家的な問題軸への移動が見られるのではないか,という作業仮説を手に入れることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前任校の愛知県立大学から,現在の西南学院大学に移籍した事で研究環境が大きく変化したことが後れの最大の理由である。特に図書館における所蔵図書の移動手続き,チェック作業,などに忙殺されたために,研究時間が予想されたほど確保出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
前述の大学移籍という理由から,文献購入,出張などをいくつか見送らざるを得なかった。この状態は,新年度においては一段落すると思われ,基本文献についての調査もほぼ終了しつつあるが,可能であれば,研究計画を所定の1年間延長して順次遂行していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
新年度は,新しい職場で現在,まだ整備が十分ではないパソコン(モバイルパソコン,プリンタなど)などのデジタル機器の購入を行う。初年度に計画していたティトマス,マーシャルらの社会理論の研究を本格的に開始するが,それに先立ち,ホブハウスの社会学,およびT.H.グリーンの理想主義などについての予備的な研究を行うための文献を購入する。年度,途中で,この暫定的な研究成果の発表のための学会参加を行う。
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