• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

経済活動における倫理と公共性をめぐる思想系譜:20世紀アメリカを中心に

研究課題

研究課題/領域番号 23530243
研究機関関西大学

研究代表者

佐藤 方宣  関西大学, 経済学部, 准教授 (90286609)

キーワード国際情報交換
研究概要

研究計画書に記した本研究計画の趣旨にのっとり、24年度も、20世紀アメリカにおける「経済活動における倫理と公共性」の代表的立場のひとつである「シカゴ学派」の市場経済評価の内実を明確化する作業として,シカゴ学派の祖とされるフランク・ナイトの経済思想の検討を行った。とりわけ24年度は、23年度の研究成果を発展させるかたちで、ナイトと同時代の思想家たち(J.M.クラークやハイエク)の思想との比較検討を深め、自由社会における市場の倫理をめぐる両者の構想の同時代的意義を明らかにすることができた。上記の研究の成果については、以下の二つの論文の刊行と、国際学会での研究報告を行うことができた。
・「市場の倫理――カーネギー,クラーク,ナイトの論じ方」経済学史学会・井上琢智・栗田恵子・田村信一・堂目卓生・新村聡・若田部昌澄編『古典から読み解く経済思想史』第3章,ミネルヴァ書房,63-80ページ,5月刊。
・「市場の倫理と討議の倫理――自由主義の変容とナイト」 『関西大学経済学会 Working Paper Series 』,関西大学経済学会,7月刊。
・「J.M. Clark and F.H. Knight on the Conditions of Liberal Society: What's the Crisis of Liberalism? 」Crises and Space in the History of Economic Thought,
3rd ESHET-JSHET meeting,コルシカ,フランス,9月14日。
また23年度と同様に、「現代経済思想研究会」を3回開催し、倫理学、社会哲学といった他領域の研究者との積極的な研究交流を行うことができた(8月15日水曜、9月29日土曜、10月6日土曜)。各回の概要は http://econthought.net/ で公開している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画は、24年度についてはおおむね順調に進展していると評価している。
まず申請時に24年度に予定していた通り、9月にコルシカ大学で開催された国際学会Eshet-Jsetでの研究報告を行うことが出来た。本研究の中心課題のひとつであるナイトの経済倫理観を同時代のクラークの思想と比較検討した報告を通じて、ヨーロッパ各国から集まった経済思想史研究の研究者たちと意見を交換することにより、本研究計画の今後の展開について重要な示唆を得ることが出来た。とりわけ、ナイトの市場の倫理をめぐる見解とその不確実性をめぐる見解との関連について多くの示唆を受けることが出来たのは、本研究の進捗にとって大きな成果であった。
また24年度の研究を通じて、ナイトと同時代のハイエクの思想との関係にまで広げることが出来た点は、「研究の目的」の達成という観点から大いにプラスに評価できる点と主張しうるだろう。このハイエク思想との比較検討については、25年度に出版される論文集への寄稿というかたちで成果発表する予定である。
さらに「現代経済思想研究会」では、功利主義思想の代表的研究者である児玉聡氏を招き、同氏の著作『功利主義入門――はじめての倫理学』(ちくま新書)の合評会を行うなど、各回において学際的な研究交流を行うことが出来たことも、本研究の目的に大いに資するものであった。
ただし、昨年度からの所属研究機関の変更の影響、研究の具体的進め方の重点移動により、海外大学所蔵の資料調査を本年度は行わないこととした。この点を鑑みると、24年度の研究の達成度は、「当初の計画以上に進展している」とまでは主張しえないものとなるだろう。
以上のもろもろの事情を勘案して、24年度については「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。

今後の研究の推進方策

本研究計画の最終年度にあたる25年度については、23年度、24年度の成果をふまえるかたちで、(1)ナイトを中心にアメリカ経済思想における「経済活動における倫理と公共性」の検討を進め、成果をまとめるとともに、(2)現代日本における経済と倫理をめぐる問題群についての検討を並行的に進めていく。
(1)については、本年6月20日~22日に開催される、the History of Economics Society meetings 2013(ブリティッシュ・コロンビア大学、カナダ)において、Hayek and Knight on the Economic Conditions of Liberal Societyというタイトルでの研究報告を行う。またこの報告をベースに、ナイトにおける自由主義の経済的基礎をめぐる見解をハイエクのそれとの対質を通じて明らかにする論文を、国際査読誌へ投稿することを進めたい。
(2)については、24年度までと同様に、「現代経済思想研究会」を拠点として研究を進めていく。本年度はとりわけ若手研究者との交流をメインに、アメリカや20世紀といった軸は残しつつも、研究対象たる時代・地域の枠を超え、さらに学祭的な研究交流を進めていく事を通じて、本研究計画の目的をより実質的に達成することを試みたい。

次年度の研究費の使用計画

経済思想の歴史的研究という本研究計画の趣旨から,思想史的研究の中心となる書籍・論文の購入費(テーマに関連する経済思想・倫理学・政治哲学関連書籍)として,物品費80,000円の使用を計画している.
また資料複写費として20,000円、文具およびパソコン周辺消耗品として150,000円の使用を計画している。
また国内学会・研究会出張の旅費300,000円、4年度内での海外学会(本年6月20日~22日にカナダのブリティッシュ・コロンビア大学で開催される、the History of Economics Society meetings 2013)への出張のための旅費300,000円、合計600,000円の出費を計画している.
さらに国際学術誌への投稿論文作成のための英文校正費用として60,000円の支出を,現代経済思想研究会における講師招聘のための費用として90,000円の支出を計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「市場の倫理と討議の倫理――自由主義の変容とナイト」2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤方宣
    • 雑誌名

      『関西大学経済学会 Working Paper Series 』

      巻: J-33 ページ: 1-18

  • [学会発表] 「J.M. Clark and F.H. Knight on the Conditions of Liberal Society: What's the Crisis of Liberalism? 」

    • 著者名/発表者名
      佐藤方宣
    • 学会等名
      Crises and Space in the History of Economic Thought, 3rd ESHET-JSHET meeting
    • 発表場所
      コルシカ大学,フランス
  • [図書] 『古典から読み解く経済思想史』2012

    • 著者名/発表者名
      経済学史学会・井上琢智・栗田恵子・田村信一・堂目卓生・新村聡・若田部昌澄編
    • 総ページ数
      301
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi