研究概要 |
研究計画書に記した本研究計画の趣旨にのっとり、25年度も、20世紀アメリカにおける「経済活動における倫理と公共性」の代表的立場のひとつである「シカゴ学派」の市場経済評価の内実を明確化する作業として、シカゴ学派の祖とされるフランク・ナイトの経済思想の検討を行った。とりわけ25年度は、ナイトと並んで20世紀の自由社会における市場の倫理をめぐる考察者として知られるハイエクの思想との比較検討を深める作業を進めた。ナイトとハイエクという、アメリカ的な「リベラル」への批判者として知られる両者が、なぜ最終的に自由社会の経済的基礎や民主主義評価について異なる見解に至ったのかを、両者の自由観の根本にまでさかのぼり検討を深めることが出来た。 上記の検討作業をふまえ、本年度は、下記の論文の刊行と、国内・国際学会での研究報告を行うことができた。 ・「ハイエクとナイトII――「リベラル」批判の二つの帰趨」桂木隆夫編『ハイエクを読む』ナカニシヤ出版、2014年3月 ・「ハイエクとナイト――「リベラル」批判と実質的自由」経済学史学会・東北部会,山形大学・大学コンソーシアムやまがた・ゆうキャンパス・ステーション,2013年4月20日(土). ・「Hayek and Knight on the Economic Conditions of Liberal Society: Why two critics of “Liberals” had come to different conclusions?」The 2013 History of Economics Society's Annual Conference, the University of British Columbia, Vancouver, British Columbia, 22. June, 2013. また25年度も「現代経済思想研究会」を2回開催し、倫理学、社会哲学といった関連領域の研究者との学際的な交流の中で、近代思想における経済倫理の問題や経済思想の方法論的問題の検討などを行なうことができた(2013年6月1日土曜、2014年1月11日土曜)。各回の概要は、http://econthought.net/ で公開している。
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