研究課題/領域番号 |
23530244
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大友 敏明 立教大学, 経済学部, 教授 (90194224)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 中央銀行 / 貨幣と国家 / 法貨 / 地金論争 / 通貨論争 / ピール条例 / 銀行制限期 / インフレーション |
研究概要 |
本年度は「J.ステュアートにおける象徴貨幣と国家」の1編の論文を執筆した。また2011年5月にはイスタンブールで開催されたヨーロッパ経済学史学会(ESHET)と2012年3月には京都での国際会議で「リカードウの中央銀行論」を報告した。後者の報告は前者の改訂版である。また夏期休暇には、イギリス、ケンブリッジ大学図書館と大英図書館で資料収集を行なった。 ステュアートの象徴貨幣と国家の論文では、ステュアートが国立銀行(中央銀行)の構想を持っていたことを明らかにし、そのなかで国家は貸付債権を保護する役割があることを指摘した。これは土地担保発券銀行というステュアートの信用論の根幹をなす理論の一層の展開と位置づけることができる。またステュアートには発券集中の論理があり、土地担保発券銀行、都市の銀行、国立銀行(中央銀行)という縦の銀行系列の論理を貨幣の生成と準備の集中という側面から展開していることを明らかにした。他方、リカードウの中央銀行論の論文では、1811年のインゴット・プランから1824年の『国立銀行設立試案』までの形成を論じ、特にインゴット・プランの段階から、金の価格を固定するために、国立銀行が真正手形割引ではなく、公開市場操作を行なうことによって貨幣発行量を統制することを指摘した。また国家がイングランド銀行から紙幣の発行権限を奪い、国家に紙幣発行の権限を移転しても、シニョレッジを国民に還元し財政の透明性を明らかにすることが国家の紙幣発行権限の濫用の歯止めになることをリカードウが指摘していることを明らかにした。これは財政と金融との関係、あるいは国家と中央銀行との関係についてのリカードウの考察であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1編の論文と2回の国際会議での報告は、予定通りの進展であり、順調に研究が進行していると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヘンリー・ソーントンの貨幣と国家について研究するとともに、地金論争期の研究を深める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費は次年度に在外研究に行くことに伴い、海外での資料収集の一部に当てることにとどめた。次年度はイギリス、ケンブリッジで在外研究をするので、今年度の研究費と次年度の研究費を合わせてその研究費に使用する。
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