研究課題/領域番号 |
23530244
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大友 敏明 立教大学, 経済学部, 教授 (90194224)
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キーワード | 中央銀行の独立 / 裁量的な貨幣政策 / 貨幣と国家 |
研究概要 |
本年度は「リカードウの中央銀行論ー貨幣制度と政府」の論文をRoutledge社から共著として発表した。この論文は、研究課題である「貨幣・中央銀行・国家の関連」における中軸的な論文であり、この論文を基礎にJ.ステュアートやH.ソーントンの「貨幣と国家」に関する論文が位置づけられる。ステュアートの論文はすでに発表されており、またソーントンの論文も完成間近である。 リカードウの中央銀行論に関する論文の意義は、政府がイングランド銀行から発券独占の機能を奪い、国立銀行を設立し同行の裁量的な貨幣政策によって貨幣価値の安定がいかにして達成されるかを解明した点にある。リカードウはその具体的な方策として公開市場操作という裁量的な貨幣政策を提唱した。しかし国立銀行の設立は国家の貨幣制度への介入を意味するので、国立銀行の政府からの独立という問題を提起した。国立銀行の設立によって政府はイングランド銀行から借金する場合よりも公衆の課税負担を減少させる利益をもたらす。しかし他方で貨幣を銀行券から不換紙幣に転落させ、物価騰貴をひきおこす危険性を伴なった。その危険性を回避するためにリカードウが主張したのが、シニョレッジの公開である。政府はこの方策によって財政管理の透明性を図ることができるとリカードウは主張した。リカードウにとって中央銀行の独立の問題は政府の国立銀行からの独立の問題でもあったのである。 今後、リカードウとソーントンの中央銀行の独立の問題を比較しつつ検討し、リカードウの中央銀行の独立についてさらに考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リカードウの論文が英文論文としてRoutledge社から刊行された。またソーントンの論文も完成間近である。資料調査も順調に進んでおり、今後さらに論文の執筆を進めることができる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、ソーントンの論文を英文で発表する予定である。第2に、リカードウの中央銀行の独立についての論文を執筆する。第3に、ステュアートの中央銀行と政府との関係についての論文を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の海外調査旅費と英文校正費にあてるため。 今年度の海外調査旅費と英文校正費に使用する予定である。
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