研究課題/領域番号 |
23530247
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
李 潔 埼玉大学, 経済学部, 教授 (10302506)
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研究分担者 |
作間 逸雄 専修大学, 経済学部, 教授 (50114947)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 国民経済計算 / 購買力平価 / 国際情報交流 / 産業別生産性 / 中国の政府統計 / 2008SNA / FISIM / GDP統計 |
研究概要 |
上記研究課題を研究する最初年度として、主に以下の研究活動を行った。1)本研究課題の中心メンバー3人(李潔・作間逸雄・櫻本健)で中国国家統計局を訪問し、国家統計局・副局長許憲春氏と国民経済計算司主要メンバー8名と、中国の統計制度改革、現行GDP推計方法、FISIMの推計、2008SNA導入に向けての問題などについて実施上の情報提供を受け、意見交換を行った。2)2008SNAの内容の精査の一環として、2008SNAマニュアル翻訳の第10章資本勘定の校正担当者である宇南山卓氏(神戸大学)を招き、研究会の形で「08SNAの資本に関する部分の内容紹介」が行われた。WU, Harry X氏(一橋大学・経済研究所)を招き「Accounting for China's Growth Performance -Pitfalls in Chinese National Accounts and Labor and Capital Statistics 」を題として、中国の全要素生産性の測定に関する方法論と利用できる統計データについて紹介された。とくに中国の国民所得勘定と労働および資本についての統計データの問題点、又、ハリー・ウー氏によって独自に推計された多数のデータも提示された。3)2005年を対象とし日本と中国の産業別購買力平価を推計し、研究結果を第58回国際統計学会(アイルランド・ダブリンで開催)で報告した。また、推計した日中韓の購買力平価を利用して、2005年日中韓を対象に産業別生産性水準の国際比較を行った。その成果を環太平洋産業連関分析学会2011年度総会(慶応大学で開催)で報告した。5)研究分担者である作間は、日本の実施例に対する検討を含め、FISIMをめぐる概念上、実施上、適用上の問題点について、検討を行い、その成果を第58回国際統計学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上の研究実績の概要に示される通り、すでにいくつかの研究成果をあげており、特に、初年度に、本研究課題の中心メンバーの訪中によって得られた情報と構築できた人脈は今後の研究課題の遂行上に大いに役立つ。また、香港中文大学・中国研究サービスセンターに中国の国民経済計算の歴史的経緯に関連する資料を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
継続に2008SNAの内容の精査。マニュアルが成文化されるに至るまでの国際的な検討過程の調査・検討を含む。統計作成機関の実務者から実施上の情報提供を受け、意見交換をする。 2008SNAの検討と同時に、今年度は、以下の2つの課題を取りこむ。1.日中GDP統計の推計方法について考察する。GDPを中心指標とする国民経済計算は国際基準であるが、この高度な加工統計は、当然ながら作成国の既存統計に全面的に依存され、実際、各国でそれぞれ異なる推計方法が確立されているのが現状である。特に日本と中国のGDP統計作成方法は、両国におけるSNAの導入経緯や統計制度、既存統計の相違によって大きく異なっている。MPSベースの国民経済計算統計からSNAベースの国民経済計算統計へ移行してきた中国は、GDP統計作成の枠組みも当然ながらこうした歴史的背景の中で構築されてきた。中国の統計の客観的な評価は、日本との比較を行うことで、統計の作成過程を客観的に検討する必要がある。2.中国の急成長に伴い、中国のGDP統計作成に対して、世界から大きな関心が集まってきた。その中でも中国のGDP統計への不信は根強い。これまで中国GDP統計が国際的に注目されてきた経緯・背景についてサーベーを行い、さらに中国国家統計局がこうした批判の一部に対する反論や対応も含めて考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.研究成果を学会報告するための旅費、あるいは意見交換やヒヤリングを行うための旅費。2.データ処理用・パソコンと関連資料データの購入。3.専門家を招くための謝金。
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