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2011 年度 実施状況報告書

有限混合モデルの統計的推測理論の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23530249
研究機関一橋大学

研究代表者

下津 克己  一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50547510)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード計量経済学 / 統計学 / 統計的推測 / 有限混合モデル
研究概要

有限混合モデルは、観測されない多様性を柔軟にモデルにすることが可能なため、実際の応用において非常に幅広く使われている。有限混合モデルの分析においては、モデルを構成する要素の個数をデータから決定することが重要であるが、そのための統計的推測については、いまだに実用的な手法が確立されていない。 平成23年度は、パラメターがスカラーである有限混合モデルに焦点を置いて、有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論を構築し小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、漸近理論の有限標本下での妥当性を検証した。 有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測、すなわち要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定することが困難である理由は帰無仮説(要素の数がm個)に対応するパラメター空間が特殊な形状をしていること、そして情報行列が特異であることである。 平成23年度の研究では、帰無仮説に対応するパラメター空間を適切に分解し、さらに新しいパラメターの変換を用いるアプローチを開発した。このアプローチを用いて、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合の局所的尤度比検定統計量の漸近分布を求めた。 実際の検定においては、Li et al. (2009)が提唱したEM-testが、実行の簡単さ、漸近分布の簡単さ、仮定の弱さ等の点で、尤度比検定統計量よりも優れていることを示している。本研究では、Li et al. (2009)のEM approachを適用し、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合のEM-testを構築した。さらに、小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、EM-testの漸近分布が有限標本下の分布の良い近似となっていることが確認され、提唱されたEM-testの実用性の高さを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、有限混合モデルにおける統計的推測の理論を発展させることである。平成23年度は、パラメターがスカラーである有限混合モデルに焦点をおき、以下の二つを目的とした。(1)有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論を構築すること。(2)小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、漸近理論の有限標本下での妥当性を検証すること。 (1)有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論の構築に関しては、当初の目的通り、帰無仮説に対応するパラメター空間の適切な分解ならびにパラメターの変換を用いるアプローチを確立した。さらに、このアプローチを用いて、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合の局所的尤度比検定統計量の漸近分布を求めることに成功した。さらに、Li et al. (2009)が提唱したEM-approachを適用し、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合のEM-testを構築した。 (2)コンピュータ・シミュレーションによる漸近理論の有限標本下での妥当性の検証に関しては、小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、本研究によって提唱されたEM-testの漸近分布が、有限標本下の分布の良い近似となっていることを確認し、EM-testの実用性の高さを確認した。

今後の研究の推進方策

平成23年度は、パラメターがスカラーである有限混合モデルに関して、対数尤度関数の高次テイラー展開を用いた、統計的推測理論を確立した。今後は、当初の予定通り、平成23年度の研究成果を拡張し、(1)パラメターがベクトルである有限混合モデルの分析、(2)混合正規分布モデルの分析、を行う。 (1)パラメターがベクトルである有限混合モデルの分析。実際の応用で用いられる計量経済モデルの多くでは、パラメターはベクトルであるため、平成23年度の分析を、パラメターがベクトルである有限混合モデルに適用できるように拡張することが必要となる。したがって、ベクトルのパラメターに関する高次テイラー展開を用いて、対数尤度関数の漸近的分析を行い、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する統計手法を構築する。 (2)混合正規分布モデルの分析。正規分布の密度関数は、平均のパラメターに関する2次の微分係数と分散のパラメターに関する微分係数が線形従属となる特殊な構造を持っている。そのため、他の有限混合モデルの場合と異なり、尤度関数の近似を求めるためには、8次のテイラー展開が必要となる。したがって、平成23年度に構築されたアプローチを、8次のテイラー展開を用いるように拡張する。これにより、混合正規分布モデルにおける、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する統計手法を構築する。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の研究費は、学会参加、コンピュータの購入ならびに修理、消耗品の購入に用いる。学会参加:日本経済学会春期大会(北海道大学)、2012 Canadian Econometrics Study Group Conference(キングストン(カナダ))、2012 North American Winter Meeting of the Econometric Society(サンディエゴ(アメリカ))で研究成果を発表することを予定している。コンピュータの購入ならびに修理:大規模なシミュレーションを行うために、コンピュータの購入を予定している。 平成23年度の未使用額29,905円は端数であるが、プリンタカートリッジなどの消耗品に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Local Quadratic Approximation in Finite Mixture Models and Testing the Number of Components2011

    • 著者名/発表者名
      下津克己
    • 学会等名
      The 28th Annual Meeting of the Canadian Econometrics Study Group
    • 発表場所
      トロント
    • 年月日
      2011年10月22日

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公開日: 2013-07-10  

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