• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

有限混合モデルの統計的推測理論の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23530249
研究機関東京大学

研究代表者

下津 克己  東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50547510)

キーワード計量経済学 / 統計学 / 統計的推測 / 有限混合モデル
研究概要

有限混合モデルは、観測されない多様性を柔軟にモデルにすることが可能なため、実際の応用において非常に幅広く使われている。有限混合モデルの分析においては、モデルを構成する要素の個数をデータから決定することが重要であるが、そのための統計的推測については、いまだに実用的な手法が確立されていない。平成24年度は、パラメターがベクトルである有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論を構築し、小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、漸近理論の有限標本下での妥当性を検証した。本研究は、平成23年度に、この問題に対する、帰無仮説に対応するパラメター空間を分解して新しいパラメターの変換を用いるアプローチを構築した。平成24年度は、このアプローチをパラメターがベクトルである場合に拡張し、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する統計量を構築した。
Li et al. (2009)は、有限混合モデルの要素の個数に関するEM-testを提唱し、EM-testが実行の簡単さ・漸近分布の簡単さ等の点で、尤度比検定統計量よりも優れていることを示した。本研究では、Li et al. (2009)のEM approachを拡張し、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合のmodified EM-testを構築した。Modified EM-testは、ペナルティ項の必要がない点において、EM testよりも優れている。さらに、小規模のコンピュータ・シミュレーションによっ て、modified EM-testの漸近分布が有限標本下の分布の良い近似となっていることが確認され、提唱されたmodified EM-testの実用性の高さを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、有限混合モデルにおける統計的推測の理論を発展させることである。平成24年度は、パラメターがベクトルである 有限混合モデルにおいて、以下の二つを達成することを目的とした。(1)有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論を構築すること。(2)小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、漸近理論の有限標本下での妥当性を検証すること。(1)有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論の構築に関しては、当初の目的通り、要素の数がm個 である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合の局所的尤度比検定統計量の漸近分布を求めることに成功した。さら に、Li et al. (2009)が提唱したEM-approachを拡張し、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合のmodified EM-testを構築した。(2)コンピュータ・シミュレーションによる漸近理論の有限標本下での妥当性の検証に関しては、小規模のコンピュータ・シミュ レーションによって、本研究によって提唱されたmodified EM-testの漸近分布が、有限標本下の分布の良い近似となっていることを確認し、modified EM- testの実用性の高さを確認した。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、パラメターがベクトルである有限混合モデルに関して、パラメターの変換ならびに対数尤度関数の高次テイラー展開を用いた、統計的推測理論を 確立した。今後は、当初の予定通り、平成24年度の研究成果を拡張し、混合正規分布モデルの分析を行う。正規分布の密度関数は、平均のパラメターに関する2次の微分係数と分散のパラメターに関する微分係数が線形従属となる特殊な構造を持っているため、平成24年度に構築されたアプローチは適用できない。尤度関数の近似を求めるためには、より複雑なパラメターの変換ならびに8次のテイラー展開が必要となる。したがって、平成24年度に構築されたアプローチを、8次のテイラー展開を用いるように拡張する。これにより、混合正規分布モデルにおける、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する統計手法を構築する。検定等計量の構築には、平成24年度の本研究で確立されたmodified EM approachを適用することになるであろう。さらに、コンピュータ・シミュレーションにより、modified EM testの有限標本下での特性を検証し、既存の統計量とパフォーマンスの比較を行う。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の研究費は、学会参加、コンピュータの購入ならびに修理、消耗品の購入に用いる。 学会参加:日本経済学会春期大会(富山大学)、2013 Canadian Econometrics Study Group Conference(ウォータールー(カナダ) )、2014 North American Winter Meeting of the Econometric Society(フィラデルフィア(アメリカ))で研究成果を発表することを 予定している。 コンピュータの購入ならびに修理:大規模なシミュレーションを行うために、コンピュータの購入を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Nonparametric identification and estimation of the number of components in multivariate mixtures2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kasahara and Katsumi Shimotsu
    • 雑誌名

      Journal of the Royal Statistical Society, Series B

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Sequential estimation of structural models with a fixed point constraint2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kasahara and Katsumi Shimotsu
    • 雑誌名

      Econometrica

      巻: 80 ページ: 2303-2319

    • DOI

      10.3982/ECTA8291

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exact local Whittle estimation of fractionally cointegrated systems2012

    • 著者名/発表者名
      Katsumi Shimotsu
    • 雑誌名

      Journal of Econometrics

      巻: 169 ページ: 266-278

    • DOI

      10.1016/j.jeconom.2012.01.028

    • 査読あり
  • [学会発表] Testing the number of components in finite mixture models2012

    • 著者名/発表者名
      Katsumi Shimotsu
    • 学会等名
      CESG 2012
    • 発表場所
      キングストン(カナダ)
    • 年月日
      20121027-20121027
  • [学会発表] Testing the number of components in finite mixture models2012

    • 著者名/発表者名
      Katsumi Shimotsu
    • 学会等名
      京都大学経済研究所研究会
    • 発表場所
      京都大学(京都府)
    • 年月日
      20120829-20120829
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi