研究概要 |
有限混合モデルは、観測されない多様性を柔軟にモデルにすることが可能なため、実際の応用において非常に幅広く使われている。有限混合モデルの分析においては、モデルを構成する要素の個数をデータから決定することが重要であるが、そのための統計的推測については、いまだに実用的な手法が確立されていない。本研究は、平成23年度に、この問題に対する、帰無仮説に対応するパラメター空間を分解して新しいパラメターの変換を用いるアプローチを構築した。平成24年度には、このアプローチを用いて、パラメターがベクトルである有限混合モデルの要素の個数に関する統計的推測の漸近理論を構築し、小規模のコンピュータ・シミュレーションによって、漸近理論の有限標本下での妥当性を検証した 。 平成25年度は、平成23・24年度に得られた結果を拡張し、混合正規分布モデルの分析を行った。正規分布の密度関数は、平均のパラメターに関する2次の微分係数と分散のパラメターに関する微分係数が線形従属となる特殊な構造を持っている。本研究では、新しいパラメータ変換と尤度関数の8次のテイラー展開を用いて、対数尤度関数が漸近的に変換されたパラメターの二次関数で近似できることを示した。さらに、本研究は、Chen, Li and Fu (2012)のEM approachを拡張し、要素の数がm個である帰無仮説をm+1個である対立仮説に対して検定する場合のmodified EM-testを構築した。Modified EM-testは、ペナルティ項の必要がない点において、EM testよりも優れている。さらに、小規模のコンピュータ・シミュレーションによっ て、modified EM-testの漸近分布が有限標本下の分布の良い近似となっていることが確認され、提唱されたmodified EM-testの実用性の高さを確認した。
|