研究課題/領域番号 |
23530250
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中村 信弘 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (90323899)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 確率的裾依存性コピュラ / 確率的ヴァインコピュラ / ボラティリティ・パズル / 多変量ファクター確率ボラティリティ / 粒子フィルター法 / CVaR最小化 / レバレッジ付き確率ボラティリティ / MCMC |
研究概要 |
(1)論文1では、ベイズ統計に基づくMCMC法を用いて確率的ヴァインコピュラを推定する統計的方法の研究を行った。非線形性の強いコピュラ関数に対して、ブロック・サンプリング-マルチムーブ・サンプラーを用いて裾依存を表す潜在変数を効率的に生成し、採択棄却-MH法により目標とする事後分布からパラメータをサンプリングする方法を開発し、数値実験と実データで、アルゴリズムの有効性を検証した。(2)論文2では、コピュラモデルをレバレッジ付の確率ボラティリティ(SVL)モデルと組み合わせて、新たな非対称SVモデルのクラスを提案した。ここでは、リターン(観測量)の攪乱項とボラティリティの攪乱項をコピュラ関数で接合し、その統計的推定に、粒子フィルター法を用いる方法を開発している。その応用として、ファイナンスの資産価格モデルの分野で最近、関心を集めているボラティリティ・パズル問題を時系列モデルの視点から解明する試みを行った。(3)論文3では、多次元SVモデルを研究した。個別の証券のリターンモデルとしてFama-Frenchモデルのようなマルチ・ファクターモデルを仮定し、共通ファクターの変動過程をクロスレバレッジ付き多変量確率ボラティリティモデルで、その残差である個別証券固有のリターンに単変量SVLモデルを適用する。固有リターンの分布には、歪度、尖度を表現する自由度の高いGeneralized Hyperbolic Skewed-t(GHSKt)分布を用いる。その統計的推定には、粒子フィルター法を用いた。実データ(Fama-French 3 ファクターとTOPIX500の個別株式30年間分の日次データ)を用い、推定方法の有効性を確認した。ポートフォリオ選択は、CVaR最小化の最適化問題を解いて行い、幾つかの典型的な期間でバックテストを実施し、その特徴を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
確率的ペアコピュラのMCMC法による推定は、数値実験や実データに対してうまく推定できることが確認できた。粒子フィルター法の適用に関しても、非対称コピュラ関数に基づくSVモデルの推定で、その方法の有効性を確認し、ボラティリティパズルというファイナンスの問題に応用することができた。多次元化に関しては、現在、研究を継続中であるが、Fama-Frenchの3ファクターをSV化した多次元モデルの推定で、粒子フィルター法の有効性を確認できた。これらの研究成果は学会で発表している。
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今後の研究の推進方策 |
多次元の確率的コピュラの推定に関して、MCMC法、粒子フィルター法の有効性を、低次元の確率的ペアコピュラや非対称コピュラ関数に基づくSVモデルの中で確認してきた。粒子フィルター法は、現在、理論の発展が続いており、MCMCと粒子フィルターを組み合わせた方法論が確立されようとしている。GPUを用いた並列計算アルゴリズムの研究も行われ始めており、これらの発展途上の理論や技術を反映させて高次元の統計的推定の問題に取り組むことを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者の論文1に関する文献、資料収集、研究会出張、論文校正等々の費用の支出がなくなり、未使用額が発生したが、平成24年度に同様の使途で支出する予定である。平成24年度に支払請求した研究費は、MCMCと粒子フィルター法を組み合わせた方法に関して、並列計算の可能性を検討するため、GPUを購入予定である。それに付随して開発環境を整備するため、必要なPCまわりのハードウエア、ソフトウエア等の物品に支出する予定である。 また、関連図書の購入、学会参加費、学会発表のための旅費、論文投稿に関する費用等を見積もっている。
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