研究課題/領域番号 |
23530250
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中村 信弘 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (90323899)
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キーワード | レバレッジ付き確率ボラティリティ / 粒子フィルター法 / CVaR最小化 / 確率的ヴァインコピュラ / ボラティリティ・パズル |
研究概要 |
まず、レバレッジ付の確率ボラティリティ(SVL)モデルとコピュラモデルを組み合わせて、新たな非対称SVモデルのクラスを提案した。ここでは、リターン(観測量)の攪乱項と潜在変数であるボラティリティの攪乱項をコピュラ関数で接合し、それらの依存構造に従来使われている正規分布以外の確率分布を導入できるように一般化した。そして、その統計的推定に、粒子フィルターを用いる方法を開発した。その応用として、ファイナンス分野の資産価格付けモデルで、最近、関心を集めているボラティリティ・パズル問題を考察した。 次に、共和分関係にある2変量ペアの時系列モデルで、その攪乱項に確率ボラティリティモデルの構造を入れる研究を行った。実際、現実のリスク資産の共和分ペアのスプレッドは、その残差分布が正規でなく、超過尖度、歪度を持ったり、そのボラティリティが確率変動するような現象が観察される。本研究では、これらを考慮したモデルを構築し、その統計的推定法として、Liu-Westの粒子フィルター法と、最近、開発され発展している粒子フィルターとMCMC法を融合した方法を検討した。 続いて、資産クラスの相互依存構造を確率的ヴァインコピュラで表現するモデルを研究した。本モデルでは、多変量分布の裾依存性を規定するパラメータが確率的時変構造をもつものを取り扱うことができる。モデルの推定には、上述の粒子フィルター法を用いた。その推定結果を利用して、資産クラスの将来リターンをMonte-Carlo法で生成し、CVaR最小化問題を解き、最適資産配分を求めることを行った。確率的下方共変動性をもつ資産クラスへの投資を行う際に、本手法は新たなリスク管理法を提供するものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
確率的ペアコピュラモデルは、数値実験や実データによる分析で、粒子フィルター法に基づき、うまく推定できることを確認できた。また、非対称コピュラ関数を用いた非対称依存構造をもつSVLモデルでも粒子フィルター法は有効であることを確認し、ボラティリティ・パズルというファイナンスの問題に応用することができた。多次元の確率的コピュラモデルに関しては、多次元裾依存係数の確率変動を生み出す潜在変数どうしの相関を入れない単純な場合で、粒子フィルター法の有効性を検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本研究の最終年度にあたるため、研究期間で得られた成果を纏める作業を行う。粒子フィルター法は、現在、理論の発展が続いており、MCMC法と粒子フィルター法の融合が研究され、また、GPUを用いた並列計算アルゴリズムの研究もその関連で行われてる。時間に余裕がある場合は、これらの発展途上の理論や技術を用いて、高次元の確率的コピュラの統計的推定の問題に取り組むことを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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