研究課題/領域番号 |
23530251
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
星野 伸明 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (00313627)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 経済統計学 / 官庁統計 / 匿名化 / プライバシー |
研究概要 |
本年度は、個票開示リスクの厳密確率分布を容易に計算する方法を明らかにした。離散分布論的に述べれば、コルチン分布という自然数の確率分割の族について、周辺分布を計算しやすい方法を提案したということである。 自然数の確率分割の第一要素の周辺分布は、個票開示リスク測度として意味を持つ。そして自然数の確率分布族の中でも、極限条件付き複合ポアソン(LCCP)分布は個票開示リスク評価において特に重要である。コルチン分布はLCCP分布を含むので、コルチン分布の周辺分布を容易に評価出来る事は意味がある。故にLCCP分布についての周辺確率は、統計関連学会連合大会の講演報告集で明示的に与えた。そしてピットマン分布はLCCP分布族には属さないが、個票開示リスク評価において重要なので、同様に周辺確率を明示的に求めている(日本経済国際共同研究センターリサーチレポートCIRJE-R-10に結果のみ収録)。 以下では、提案した方法の概略を記す。u個の独立かつ同一な正の整数上の分布から寸法指標の多項分布が生成される。ここでuがポアソン分布に従うとして多項分布の混合分布を生成し、更に総度数が所与の条件付き分布を考えればLCCP分布が得られる。故にLCCP分布の一次元周辺分布を求めたければ、多項分布の一次元周辺分布である二項分布を混合し、更に総度数所与の条件付き分布を考えれば良いことになる。 攪乱及び模造を含む場合の個票開示リスク評価がプロジェクトの目標となるが、本年度の成果は、そのような評価が妥当に行えるリスク測度の設計に資すると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の目的とは間接的にしか関係しないが、良いアイデアを思いついたので、その方向での研究を優先させた。
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今後の研究の推進方策 |
攪乱及び模造を含む場合の個票開示リスク測度について、現実的な評価手法を考察中である。近い将来、国勢調査の匿名データ作成に攪乱が採用される可能性があり、実務的な解決策を急いでまとめておかなければならない。この後、プロジェクトの目的である統計理論的なリスクの理解へ抽象化する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災の影響で科学研究費の交付決定が想定していたより遅れ、金額も三割減の可能性があったために、その執行を前提としないで研究を進めた。結果として満額が交付されたが、二割五分ほど翌年に執行を持ち越すこととした。 執行を先延ばしにしたのはシミュレーション用のワークステーション購入なので、次年度にこれを行う予定である。
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