研究課題/領域番号 |
23530252
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
根本 二郎 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20180705)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交流 / 国際比較 / 東アジア / データベース |
研究概要 |
日本の私立大学について、インプット距離関数を推定して技術的効率性を計測し、かつ規模の経済性と範囲の経済性の検証を行った。技術的効率性の値は概ね0.6から0.8の間にあり総費用の20%から40%が効率フロンティアからの乖離によって生じていること、規模の経済性は広く認められること、範囲の経済性は一般に認められないが、潜在的には一部の大規模大学において教育・研究の兼業による費用削減効果があり得ること、特に研究を単独の機関で行った場合に費用上不利となる可能性があること、が明らかとなった。 こうした分析のために、費用データを用いずにインプットとアウトプットの数量データのみから、規模の変動や兼業の有無による費用への影響を評価することができるインプット距離関数モデルを開発した。このモデルは、確率フロンティアの手法により推定したインプット距離関数を、双対性を利用することで費用関数に変換する。資本コストのデータが利用可能でない大学等の非営利事業体の効率性分析や費用構造分析に用いることができる他、費用データの比較可能性に問題のある国際比較研究に応用の可能性がある。また、インプット距離関数の定義上、インプットとアウトプットの関係に非効率性が存在することを自然に許容する。この点で、従来の費用関数モデルよりも一般的で、実データにより適合的である。 また分析のためのデータとして、全国私立大学白書(第7次、第8次)を用いて1999年度と2004年度の延218大学からなるデータベースを構築した。このデータベースには財務諸表から得られる範囲で費用データをも含んでおり、費用関数モデルによる追試や配分非効率を含む効率性分析などに使用することが可能となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の計画として、私立大学の効率性の計測、規模の経済性と範囲の経済性の検証を行い、インプット距離関数モデルの実データに対する適用可能性を実証できた。したがって、この次に予定している国立大学についての同種の分析は、データベースが完成すれば直ちに実施可能である。国立大学データベースについては、財務諸表を用いて2004年度~2009年度について完成しており、2010年度分を加えてバランスド・パネルとし国立大学の分析に着手するまで、多くの時間を要しない段階にある。 私立大学についての分析結果についても、二編の論文にまとめ、一編は中京大学経済学部附属経済研究所の叢書の一章として発表済みである。またもう一編は、国際的に評価を有する学術誌に投稿中である。 一方、アジアの大学の国際比較分析については、台湾の中央研究院経済研究所において、台湾、韓国、中国、マレーシアの研究者と第一回の打ち合わせを行った。 以上の状況から、研究初年度としては順調な進捗をしていると判断する。初年度の進捗としては順調と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
まず国立大学に関する技術効率の計測、規模の経済性、範囲の経済性の検証を行う。あわせてアジアの大学の国際比較研究に参画するため、比較研究プロジェクトの定める共通仕様によるデータベース構築を勧め、それによる分析を実施する。 分析法の面では、DEAをベースにした効率性の局所非パラメトリック推定量の応用については、計算プログラムの開発を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費として生産フロンティア関数の推定とDEAによる非パラメトリック推定を行うための高性能パソコン(64bit、据置型)を購入する。パソコン本体とモニタで、18万円程度の者を予定する。 消耗品は、東洋経済新報社の大学四季報(CD-ROM)データの2012年度版を購入する(20万円)。また、分析のための計算環境を整備するためMathWork社製のMATLABを購入する(13万円)。これは主として、非パラメトリックなDEA推定のために用いる。 外国旅費は、学会での研究発表と共同研究者との研究打ち合わせのため、1回のタイ出張を予定する(10万円)。
|