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2011 年度 実施状況報告書

国際的生産ネットワークに関する理論的・実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530254
研究機関神戸大学

研究代表者

得津 一郎  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80140119)

研究分担者 伴 ひかり  神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード国際産業連関表 / 国際貿易 / 垂直的特化 / 一般均衡 / ネットワーク / 国際研究者交流(アメリカ) / 国際情報交流(オランダ)
研究概要

国際的生産ネットワークの分析のための基礎資料として,GTAPデータを補足的に加工することで世界全体の国際産業連関表(以下世界表)を作成した。世界表は全世界を,EU15国,その他EU,アメリカ,NAFTA,中国,日本,その他アジア,南米,ROWの9地域,耐久産業財,非耐久産業財,サービス他の3部門に分割し,地域間の財の貿易に関して個別に輸送費,関税の両方が把握できる網羅的・体系的な完結表である。 本研究の目的は,生産ネットワークの世界的な変貌の要因を実証的に明らかにすることである。世界表を作成したことはそのための基礎資料として第一級の重要性を持つ。本年度は,この世界表に基づき2008年における世界貿易の急激な減少を生産ネットワークの拡大に求める分析を試みた。分析に用いたモデルは独自に開発した数量・価格が同時に決定される産業連関モデルである。 一国で生じた需要の外生的な変化は,生産ネットワークによる中間財の貿易によって増幅され,現実の需要の変化以上の貿易の変化を生じさせる。事実,2008年の世界不況時には世界全体の需要の変化率の約3.8倍の貿易の減少率が観察された。しかし,われわれの分析では生産のネットワークによる貿易量の減少は需要の減少の1.96倍に過ぎない。この値は数量だけを決定する通常の産業連関分析モデルの値2.08よりも若干小さい。すなわち生産ネットワーク以外の要因をモデルに組込む必要性を示唆している。 数量・価格が同時に決定されるわれわれのモデルは,同時期に観察された生産物価格の低下の追跡が可能であり,さらに需要主導モデルである通常の産業連関モデルとは異なり,金融部門の供給制約をモデルに組込むことも可能である。そのため,基本的に金融部門の機能不全によって生じた2008年の世界不況の特徴を実証的に把握することが可能なモデルを開発したことが本年度の研究の意義である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画は,本年度中に基礎資料(国際産業連関表)を整備し,国際的生産ネットワークに関する記述統計的な分析を行う予定であった。また,分析対象をアジアに限定し,アジア経済研究所が公表しているアジア国際産業連関表を分析目的に応じた形に修正して分析の基礎データを作成することを計画していた。その作業は予想以上にはかどり,年度前半にすべてを完了し,年度後半はアジアのみならず世界のすべての地域からなる網羅的・体系的な産業連関表を作成にまで作業範囲を拡大することができた。 いずれの基礎データに関しても,記述統計的な分析だけでなく,独自に開発した価格・数量同時決定産業連関モデル(疑似一般均衡モデル)によって,各国の需要がどのように世界にスピルオーバーするのかを分析することができたことは,研究が予想以上に進んでいることを示している。さらに,本研究で作成した世界表に基づく自由貿易の経済的帰結に関して,一定の成果を公表することができた。(Ban, H. The Impact of East Asian FTAS on the Structure of Dmand, in T. Kinkyo et al eds., Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia, World Scientific, forthcoming in 2012)

今後の研究の推進方策

先に述べたように研究は順調に進んではいるものの,それを論文として公表するには至っていない。現在執筆中の論文は2008年の世界不況時における世界貿易の大きな減少の原因を,国際的生産ネットワークに求めようとするものである。そこでの分析では,データの利用可能性のため,最新のデータを用いたものではない。 そのため現在2012年3月に公表されたGTAP(Ver.8)に基づき,最新の世界表を作成して論文の精緻化を進めている。今年度の研究計画は,早急に新しい世界表を完成させそれに基づく,上記の分析結果を,学会,セミナー等で報告し,それを国際的な高水準の雑誌に投稿する段階に到達することである。

次年度の研究費の使用計画

現在執筆中の論文は,まずは国際通貨基金(IMF)のワーキングペーパーとして公表する予定である。ワーキングペーパーの刊行は,研究内容の水準を保証するために国際通貨基金におけるセミナー報告やドラフトの査読が条件となっている。そのため,渡米の必要性が生じる可能性があり,旅費の支出が必要である。 さらに,現在はGTAPデータに基づき独自に作成した疑似産業連関表を用いた分析を行っている。しかし,オランダのフローニンゲン大学では,大規模な国際的プロジェクトとして本来の世界産業連関表の作成作業が進んでいる。われわれの分析モデルと分析結果を公表し評価を得るためには,よりエスタブリッシュされたデータを基礎資料とする必要がある。次年度はこのデータの利用に関する費用の出費が必要となる可能性がある。 また,実際の論文の投稿前に国際的な研究者のアドバイスを取り入れるため海外のセミナー等での報告のため旅費の支出が必要である。さらに,実際の論文の投稿にあたり,英文校閲等の費用も必要である。

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公開日: 2013-07-10  

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