本研究課題に関連する平成28年度の研究実績は,査読付き国際学術誌掲載論文1本,国際学会発表1件,国内学会発表1件である.査読付き国際学術誌掲載論文は,四半期と月次の周期が混在する時系列のベイジアン多変量Beveridge-Nelson分解を提案し,アメリカのマクロ経済時系列データに応用したものである.結果として得られる月次実質GDPと月次GDPギャップは,それぞれ景気水準指数とギャップ指数と解釈でき,景気の古典的循環と成長循環を区別して計測するのに有用である.また2件の学会発表は,イギリスのインフレ期待の区間データに混合正規分布を当てはめ,インフレ期待の分布のベイズ推定を試みたものである.研究成果はディスカッション・ペーパーとして公表し,査読付き国際学術誌に現在投稿中である. 研究期間全体を通じては,査読付き国際学術誌に7本の論文を公刊した.特に研究計画の中心となる論文は,研究期間の3年目にディスカッション・ペーパーとして公表し,国内外での学会報告を経て,6年目に査読付き国際学術誌に掲載され,研究期間内に目的を達成することができた.また研究を進める中で,単位根の数が異なる時系列の多変量Beveridge-Nelson分解の必要性に気づき,次の研究課題として取り組むことにした.基本的なアイデアは,レター誌ではあるものの,査読付き国際学術誌掲載論文として公刊したので,今後はさらに研究を発展させる予定である.
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