研究課題/領域番号 |
23530262
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大野 由夏 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50598480)
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
経済制裁や貿易制裁のスタイライズド・ファクトを確立するためのサーベイを行い、情報をまとめる作業を行った。ある程度予想されていた事ではあるが、経済制裁の歴史は長く多様であり非常に興味深い情報収集ができた。また、幾度かにわたって経済制裁・貿易制裁の研究の方向性、及び、本研究で構築しようとしているモデルと現実社会との整合性、WTOの果たすべき役割など、国内外の研究者と意見交換をはかった。特に、本研究の中心となる生物兵器や核兵器などの大量殺戮兵器の研究開発に関しての経済生成については国際連合が関与する可能性が高いが、環境問題や人権問題などその他の経済制裁についてはWTOの果たしうる役割も有るという意見が多く、まだ十分な研究がされていないことから、本研究から派生した今後の研究課題の糸口がつかめたと言える。また、これらの収集された情報や、他の研究者との意見交換をベースに経済制裁の大量殺戮兵器の開発に対する効果を分析するための理論モデルはを書き直し、精密度を上げた。モデルは当初の予定通りLee & Wilde (1980 Quarterly Journal of Economics) に類似した確率的研究開発モデルを利用しているが、非制裁国(核兵器などの大量殺戮兵器の開発をしている国)の研究開発活動を個別に分析するのではなく、制裁国との無期限ダイナミックゲームを用いている。課題であるシミュレーションについては思ったほど興味深い結果が得られることが出来ず、次年度に課題を持ち越すかこの方向を諦めるか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経済制裁のモデルにも磨きがかかり理論的に興味深い結果が出ており、歴史的な経済制裁の事例等の情報収集や国内外の研究者との情報交換や意見交換などの順調に進んでいる。新しい研究の方向性が見えてくるなど、予想外の成果も出しているが、当初予定していたシミュレーションに関しては理論モデル以上の結果が出ておらず、この点に関してのみ次年度への持ち越しの検討課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究課題としてはいくつかある。まず、第一にシミュレーション分析をこれ以上行うことでより良い結果が得られるかどうか見極めることである。状況によっては、シミュレーション分析を断念する可能性もあるが、他の形のR&Dモデルを使うことにより興味深い結果が得られる可能性もあり、検討する余地がある。次に、研究成果を発表できる形にまとめ、学会やセミナーなどを通して研究結果を発表することである。また、これらの活動を経済分析に反映させ、論文投稿の準備に入る予定である。また、経済制裁に関する事例等を含め、情報収集の成果と研究結果をウェブなどを通して公開する作業も必要となる。当初は経済制裁・貿易制裁のミニコンファレンスを予定していたが、関連研究者の日程・体調不良等で年内には実現が困難な様子であるため、国外研究者との国際交流は一同が一箇所に会する形では無く、こちらから訪問するか研究者の招聘という形で行う予定である。 24年度に研究費の未使用額が発生したが、これは当初研究目的で来日予定だった海外研究者とのスケジュール調整が年度内につかなかったためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な経費の項目は、学会参加費、旅費、海外研究者の招聘費用、また論文の投稿準備・投稿費用などである。更に、研究成果の公開の為の、ウェブページ作成等のソフトウェアーやトレーニング、研究補助費用も計上予定である。シミュレーションに使用するソフトウェアー/ハードウェアーの計上も予定している。24年度の未使用額については、当該海外研究者とのスケジュール調整を図っており、25年度内に実現予定である。
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