研究課題/領域番号 |
23530265
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張 陽 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (60302204)
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研究分担者 |
河野 達仁 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00344713)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | UGB規制 / 社会厚生 / 次善政策 / 交通混雑 |
研究概要 |
初年度にOD交通量のデータを用いて交通混雑のパラメタを推定し、その値を使ってシミュレーションを行うことは初年度の計画の一部であったが、データの選別に難度があり、量も莫大であるため、パラメタ推定作業をせず、Bruchner (2007)の値をそのまま利用することにした。河野氏の学生は均衡解、混雑税、FAR(容積率規制)、UGB(土地利用規制)とFAR and UGB併用などの5ケースに関してシミュレーション分析を行い、均衡のケース、最善政策及び次善政策を定量的に評価した。最善政策の効果を基準に、シミュレーションの結果はUGB規制の効果が10%未満で、FAR規制の効果が70%~80%で、FAR and UGB併用効果が80%以上である結果を示した。特にUGB規制は期待されるほど効果がないとBruchner (2007)と同様な結論が得られた。 理論モデルの開発においてより現実な都市を想定してモデルを開発した。Sasaki and Kaiyama (1990)の研究を踏まえ、業務地区に立地した企業は立地点と関係なく1単位の土地を使用すると仮定した。よって、均衡における内生変数は従来の個人厚生水準と都市境界だけでなく、賃金率と業務地区のサイズも内生的に決まる。簡単化のため、通勤者は業務地区境界まで通勤し、混雑は住宅区にのみ発生すると仮定した。内生変数が増えるゆえに、解析的な分析がややこしくなり、まずシミュレーション分析を試みた。シミュレーションの結果によると、従来のUGB規制の評価と異なり、面積を持つ業務地区の枠組でUGB規制は社会厚生を高める効果がなく、逆に社会厚生を減少させるのである。 面積を持つ業務地区を扱うとUGB規制の効果がなくなる可能性があると予想されていたが、上述の結果はその予想を証明し、初年度の目標を達成したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bruckner (2007)のパラメタの値をそのまま利用して河野らの研究に対してシミュレーション分析を行なった。Bruckner (2007)には成熟な計算方法は紹介され、計算方法の開発の手間を省けた。またパラメタの推定を行なわないため、計算の量は少なくで済んだのである。 また、より良い結果を出すためにモデルの設定に工夫するしかない、伝統のAlonso (1969)モデルは内生変数が二つしかなく、解析的な分析も完全にされている。面積を持つ業務地区を取り入れると、モデルは複雑になり、分析の難度も増す。それに交通混雑の外部性を取り入れると難度はさらに増すのである。Sasaki & Kaiyama (1990)は面積をもつ業務地区を考慮したAlonsoモデルを開発し、ほとんどの解析解がえられた。よって、本研究もSasaki & Kaiyama (1990)の研究をベースに、交通混雑の外部性を取り入れた。具体的に面積を持つ業務地区に立地した企業は一社あたりに一単位の土地を消費するという計算上に一番取り扱いやすい形で業務地区を扱い、しかも混雑は業務地区内に発生しないと仮定した。 消費者の効用関数はCESと準線形二通りあるが、計算上の都合を考え、効用関数を準線形にした。モデルの設定上にいろいろな工夫をしたため初年度の目標は達成されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今までの結論はあくまでもシミュレーションによるものであり、今年度はモデルに解析的な分析を行う。現在考えている方策は:動学的な分析方法を取り入れて解析解を見つけることを試みる。住宅区での人口密度は距離と共に常に変動しているため、時間軸とともに変動している変数を扱う動学的なやり方は本モデルにも適用できると考えられる。このやり方は既にKanemoto (1976), Arnott (1979), Pines & Sadka (1985), Kono, Joshi & Morita (2009)らに用いられている。しかしながら、上述の論文で業務地区をポイントCBDと扱ったため、分析は非常にやりやすくなり、解析解はうまくえられたのである。これらの既存研究に対して、本研究で扱っている業務地区での企業密度変数は距離と共に変動するので、業務地区に関わる内生変数(例えば、賃金率と業務地区の境界)は都市境界と厚生水準に影響を与えるため、分析はややこしくなるのは考えられる。河野らの論文ではFARとUGB両規制に関する動学的な分析を行なってきたが、河野の論文もポイントCBDと仮定したのである。動学分析の経験者かつ本研究の分担者である河野氏と連携を取りながら今年度で面積をもつ業務地区を扱うモデルに解析的分析を行うと計画している。途中結果は随時国内に開催する各種のワークショップに報告し、各地の専門家からコメントをいただきながら分析方法を改善していくと考えているところである。
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次年度の研究費の使用計画 |
今まで得られた、UGB規制は社会厚生を高める効果がなく、逆に社会厚生を低下させる効果となるという結論はシミュレーションによるもので、しかもあるパラメタ範囲内に成立したものである。解析解を存在するか否かを検証するためにパラメタ値の範囲を広げてUGB規制の効果を評価しなおす必要がある。今年度のはじめに東北大学大型計算機センターのプログラムを利用して様々なシミュレーションを学生さんに行ってもらう予定である。計算機の使用料金はこのために用いられるのである。 シミュレーションと同時に、動学的な考えをモデルに取り入れ、解析的な分析を行う。途中結果は随時国内の関連のあるワークショップで発表し、各地の専門家からコメントをいただくと考えている。国内の旅費はそのために使われる。 また、今までシミュレーションで結果、あるいは解析的な結果(もし解析解が得られたら)を、国際会議で発表し、さらに論文にまとめて国際雑誌に投稿する予定である。国際会議への参加費、通信費及び研究成果投稿料はこのために用いられる。
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