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2012 年度 実施状況報告書

都市計画規制に関する経済分析:主に交通混雑の次善政策として

研究課題

研究課題/領域番号 23530265
研究機関東北大学

研究代表者

張 陽  東北大学, 情報科学研究科, 助教 (60302204)

研究分担者 河野 達仁  東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00344713)
キーワードUGB規制 / サブセンター / 社会厚生 / 交通混雑 / Area CBD / FDI / 租税競争 / 同盟国
研究概要

昨年度のシミュレーションの結果を参考に今年度は動学的な分析方法を用いてUGB規制の非効率を解析的に証明することを試みた。CBDに面積を持たせることによって分析の難しさが増し、UGB規制が必ずしも社会厚生を高める効果がるとは限らないという結論が得られたが、両方の可能性が示唆される。具体的にUGB規制が有効であるあるいは有効でないという具体的な条件を導くことができなかった。
また、今年度はサブセンターを導入したケースではUGB規制の有効性を検証することにした。Anasら (2007)はサブセンターを考慮した都市ではUGB規制の有効性を検証したが、彼らは特殊な ロジット効用関数を用いることで、UGBの非効率性がすべてのケースで成立することを証明した。私たちの試みではCBDとSBD両方に面積を持たせることにした。解析的な分析が難しいため、現在シミュレーションを行っている最中であり、来年度はシミュレーションの結果を参考に解析的な分析方法を見つけることを試みる。
上述の研究以外に今年度は三カ国間の租税政策に関する研究をも行った。人口サイズの異なる二つの国からなる連盟地域(たとえばアセアン地域)が一つの人口大国(たとえば、インド、中国など)と対抗し、第三国にある独占企業を誘致することを想定する。分析結果は三カ国ともFDI企業を引き付けるために補助金を出し、連盟地域内の小国の人口規模は大きいほどFDIの連盟地域への立地可能性が高いことを示した。往路と復路の異なる輸送費を考慮したケースでは、連盟内の二カ国間の輸送費が高ければFDI企業が人口大国に立地する傾向がある。本研究はWootonら(2007)の研究をベースに拡張したもので、Wootonら(2007)よりあたらなナッシュ均衡を見つけた。また人口サイズの異なる三カ国を扱うことから、既存研究に比較し、より現実的な意味を持つことはいえよ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

既存研究においてUGB規制に関する分析のほとんどはCBDをポイントと扱っており、本研究はCBDに面積を持たせることにし、業務地区内の賃金率を内生化した。比較静学分析では、今までの定説と異なり、UGN規制が社会厚生水準を低める可能性を示唆した。それを解析的に解釈するために動学的なやり方で試みたが、ラグランジュ乗数の符号が定まらないため、社会厚生の都市境界に関する微分の正負が定まらなくなる。すなわち両方の可能性が存在すると証明された。ただし、どのような条件の下でUGB規制が有効な政策であるか、あるいは有効な政策でないかを証明することができなかったため、有効な政策提言をすることができない。
サブセンターを考慮に入れると、UGB規制の反例が出てくると考えられる。そのため、今年度はサブセンターを考慮した交通混雑モデルを開発した。CBDとSBD両業務地区のいれずにおいても面積を持ち、異なる内生化した賃金率を設定した。比較静学分析を行い、UGBの有効性は判断不可能となった。原因は以下の二つに考えられる。①両業務地区の境界、両地域の境界と都市境界が同時に内生的に決まる。②賃金率の内生化である。解析的な分析は可能であるかどうかはまずシミュレーションをし、その結果に基づき、解析的な分析を試みると考え、現在サブセンターを考慮したモデルでのシミュレーション分析をやっている最中です。モデルの複雑さは分析を難しくし、予想ほど進捗していない。
租税競争の研究は非常に順調に進んでいる。理由は以下の二つと考えられる。①Wootonら(2007)の成熟の研究があるため、ちょっとした改良を行えば、大体結論が得られる。②この類の研究はほとんどシミュレーションの結果に依存するものなので、数学的に解けるならシミュレーションの結果を得るのはそれほど困難なものではない。新しい均衡解を見つけるのは意外な結果であった。

今後の研究の推進方策

動学的な分析方法でUGB規制の効率性と非効率性の条件式を導くことができなかった。現在サブセンターを考慮したモデルを数値分析している最中である。性能のいいパソコンの購入はそのためである。
このシミュレーションの結果により、以下二通りの進め方を考えている。①シミュレーションの結果にしたがって、解析的な分析方法を開発する。結論をまとめて論文を作成する。②解析的な分析方法が開発することができなかったら、両ケースのシミュレーションの結果をまとめて論文にする。更にシミュレーションの結果や論文を各種のワークショップと国内外の学会に発表し、専門家からの意見やコメントを聴取し、論文に反映する。旅費はこのために使われる。
最終的に投稿論文を作成し国際ジャーナルに投稿する。研究成果投稿料はこのために使われる。また購入する書籍は論文レビューを書くために用意するものである。
今年は科研の最終年度であるため、最後に報告書を作り上げなければならない。印刷費用は最終報告書の作成と郵送に使われるものである。
中国の環境問題は現在世の中に注目されており、特に車の排出ガスが中国の大気汚染に大きな影響を与えている。道路利用料金や自動車保有税、燃料税の税率調整は如何に中国の大気汚染を緩和することができるかは中国各級政府にとっては急務である。来年度は中国の現実データ(入手可能であるならば)を用いて中国の道路利用料金、自動車保有税と燃料税の是正を分析する。
具体的には、自動車保有選択を内生化した自動車利用モデルから、I)高速道路料金と燃料税、II)燃料税と保有税、III)高速道路料金、燃料税、保有税の効率的水準を求める理論公式を導出し、それぞれのモデルに現実のデータを適用することで各料金・税の効率的水準を算出する。同時に、分析I)とIII)、II)とIII)を比較することで、それぞれの相互依存関係がどのよう料金や税率に影響を与えるかを分析する。

次年度の研究費の使用計画

今年度予定していた研究打ち合わせは相手のご都合により急遽キャンセルすることになった。そのため、数万円の未使用の金額は出たわけであった。これを次年度のワークショップや研究打ち合わせにまわすことにした。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 道路整備財源調達に伴う厚生損失を考慮した高速道路料金の効率的水準2012

    • 著者名/発表者名
      森杉壽芳,河野達仁
    • 雑誌名

      日本経済研究

      巻: 67 ページ: 1-20

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Is Mandatory Project Evaluation Always Appropriate?: Dynamic Inconsistencies of Irreversible and Reversible Projects2012

    • 著者名/発表者名
      Tatsuhito Kono, Hiromichi Notoya
    • 雑誌名

      Journal of Benefit-Cost Analysis, Berkeley Electronic Press

      巻: 3 ページ: Web Journal

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spatial Period-Doubling Agglomeration of a Core Periphery Model with a System of Cities2012

    • 著者名/発表者名
      Kiyohiro Ikeda, Takashi Akamatsu, Tatsuhito Kono
    • 雑誌名

      Journal of Economic Dynamics and Control

      巻: 36 ページ: 754-778

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Optimal regulation on building size and city boundary: An effective second-best remedy for traffic congestion externality2012

    • 著者名/発表者名
      Tatsuhito Kono, Kirti Kusum Joshi, Takeaki Kato, Takahisa Yokoi
    • 雑誌名

      Regional Science and Urban Economics

      巻: 42 ページ: 619-630

    • 査読あり
  • [雑誌論文] FAR Regulations and Unpriced Transport Congestion2012

    • 著者名/発表者名
      David Pines, Tatsuhito Kono
    • 雑誌名

      Regional Science and Urban Economics

      巻: 44 ページ: 931-937

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A New Interpretation on the Optimal Density Regulations: Closed and Open City2012

    • 著者名/発表者名
      Tatsuhito Kono, Kirti Kusum Joshi
    • 雑誌名

      Journal of Housing Economics

      巻: 21 ページ: 223-234

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Residential Land Use with Demographic Dynamics of Young and Old Generations2012

    • 著者名/発表者名
      Tatsuhito Kono, Toshiaki Kotoku, Toshimori Otazawa
    • 雑誌名

      Journal of Housing Economics

      巻: 21 ページ: 283-295

    • 査読あり
  • [学会発表] Tax Competition for Foreign Direct Investment among Three Countries2012

    • 著者名/発表者名
      張陽
    • 学会等名
      第二回 アジア地域科学セミナー
    • 発表場所
      北九州
    • 年月日
      20120929-20120929

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公開日: 2014-07-24  

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