研究課題/領域番号 |
23530268
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
後藤 和子 埼玉大学, 経済学部, 教授 (00302505)
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キーワード | 著作権と契約(オランダ、イギリス) / 契約理論 / クリエイティブ産業 / 産業組織 / インセンティブ / 産業集積 |
研究概要 |
今年度は、京都で6月に国際文化経済学会大会が開催された。その大会での発表を申し込み受理されたため、クリエイティブ産業における著作権と契約に関する論文を作成し発表した。論文タイトルは、Copyright and contract & copyright; from the supply side point of viewである。 国際文化経済学会では、テキサス大学の知的財産とイノベーションセンター所長のリーボウィッツ教授が、違法ダウンロードによって音楽産業がどんな影響を受けているのかをめぐり、興味深い基調講演を行う等、著作権の経済に関する関心は高い。しかし、クリエイティブ産業の産業組織を考慮に入れて、著作権の契約に着目した研究はほとんどないため、研究の空白を埋める意義があったといえる。 8月には、イギリス、フランス、オランダを訪問し、著作権と経済研究の先駆者であるR.タウス教授や、C.ハンドゥク講師に、ヨーロッパの状況について、また、著作権と契約を巡る研究を深めるための文献等についてご教示をいただいた。その際、イギリスでは、オーファンワークス(孤児著作物)の著作権処理をめぐるレポートが出され話題を呼んでいるとうかがい、そのレポートをみることができた。後日、日本でも大きな話題を呼ぶことになったテーマにいち早く現場でふれることができたことは有意義であった。 また、クリエイティブ産業の一分野である工芸分野に関して、九谷焼の窯元を訪ね、人間国宝と、そのご子息で工芸の新たな活路を見いだすべく挑戦している九谷塾の吉田幸央氏や、技術研修所の方々にヒアリングを行い、工芸産業の課題について理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に書いたとおり、2012年6月に京都で開催された国際文化経済学会大会でCopyright and contract & copyright; from the supply side point of viewというタイトルの論文発表を行った。また、同じ国際学会大会で、クリエイティブ産業の1つである工芸産業を中心として、Intangible cultural heritage and an Asian perspective でパネルを務めた。このセッションは、国際文化経済学会大会が、アメリカとヨーロッパ以外で開催される初めての大会であり、アジアの視点から無形文化遺産に関して問題提起する目的で設けられた特別セッションであった。その中で、無形文化遺産政策は、日本が世界より50年以上早く取り組んできた実績がある。特に、芸能と工芸の技に焦点をあわせ、工芸産業の振興にも深く関わってきたことは注目に値すること等を、九谷焼等の調査に基づき指摘した。 無形文化遺産政策に関しては、その後、『文化遺産の経済学』という英語テキストの中に、執筆の機会を得て、現在刊行に向け準備が進んでいる。 8月には予定通り、イギリス・フランス・オランダを訪問し、ヨーロッパの研究者との意見交換や専門的知見の提供を受けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
クリエイティブ産業における契約や著作権に関する日本語の著書を刊行する予定である。 また、夏には再度、ヨーロッパを訪問し、ヨーロッパの研究者と研究交流を行い、クリエイティブ産業における著作権契約や産業組織が、ヨーロッパと日本ではどのように異なるのか比較を行えればと考えている。 国内の著作権法の研究者とも意見交換を行い、オーファンワークス等の著作権に関する共同研究の準備を開始する予定である。また、国内のクリエイティブ産業に関しても、継続的に国内各地の調査を続けていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外調査や専門的知見の提供を受けるための旅費や、国内調査のための旅費や謝金が必要である。 また、研究の遂行に必要なパーソナルコンピュータ関連の備品や図書、資料の購入、研究成果を発表するために、研究費を使用する予定である。
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