研究課題/領域番号 |
23530268
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
後藤 和子 埼玉大学, 経済学部, 教授 (00302505)
|
キーワード | クリエイティブ産業 / 著作権 / 契約 / インセンティブ / 産業組織 / デジタル文化資源 / 法と経済学 |
研究概要 |
今までの研究成果を、2013年4月末に『クリエイティブ産業の経済学:契約・著作権・税制のインセンティブ設計』(有斐閣)としてまとめ刊行した。 特に、クリエイティブ産業の産業組織においては、流通を担う企業と、制作を行うアーティストや小さな制作企業とでは、前者の方に資金力がありリスクをとることができるため、著作権収益の分配においても有利にならざるをえない現状がある。しかし、過度に流通側にコントロール権が付与されると制作側の創作意欲をそぐことにもなるため、著作権をめぐる契約とインセンティブ設計に関して、適度なバランスが必要であることを指摘した。 平成25年度は、ヨーロッパとアメリカで大きな議論となっていた「孤児著作物」の著作権をめぐる議論も視野に入れて研究を行った。国立国会図書館や弁護士、研究者によって、デジタル文化資源のネットワーク構築と孤児著作物をめぐる研究会やシンポジウムが開催され、パネリストとして参加する等、議論の機会があった。その成果は、7月に開催された文化経済学会<日本>大会で「文化情報資源の創造と活用をめぐる政策の現状と課題-知的財産としての文化情報資源」というタイトルで発表した。また、発表を基に、文化経済学会<日本>編『文化経済学』第11巻第1号に「文化情報資源政策の確立に向けて-国際競争と著作権の視点から-」として発表した。 8月には、オランダを訪問し、イノベーションと技術変化が文化産業にどのような影響を与えたか、エラスムス大学講師・C.Handkeと研究交流を行い、9月にはシンガポールデザイン工科大学を訪問して、M.Cho講師とデジタル文化資源政策について共同研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始年度(平成23年度)が、東日本大震災が発生した年であったため、海外からの研究者の招へいや海外研究者との研究交流が思うようにできなかったため、当初の計画より研究の進捗がやや遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
海外研究との研究交流は、平成24年度(2012年度)以降は、順調に進んできた。 昨年度は、著作権と契約のみでなく、文化資源のデジタルネットワークの構築やインターネット経済に着目し、そこに含まれる著作権問題等の国際比較研究に着手した。今年度も、引き続きデジタル文化資源ネットワークに関して研究を行うとともに、クリエイティブ産業の1つである工芸について、知的財産としての側面に着目して国際比較を行う予定である。 6月にはモントリオールで開催される国際文化経済学会大会で、9月にはドイツで開催される国際文化政策学会大会で、それぞれ共同発表を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究開始年次に東日本大震災があり、海外研究者の招へいや共同研究に支障が生じたことが、予算執行が遅れる原因となった。また、今年度調査及び共同研究を行った研究者が所属するシンガポールデザイン工科大学から旅費が出されたため、科学研究費の支出が少なくなったことも理由である。 物品については、年度途中でほかの大学への移動が決まったため、使用期間が限定されるため、新しい購入を控えたことも原因である。 2014年6月にモントリオールで開催される国際文化経済学会で論文発表を行い、8月にはオランダ・エラスムス大学を訪問して研究のまとめを行う予定である。また、9月にドイツで開催される国際文化政策学会でも論文発表を行う予定である。 また、購入を控えていた物品等も新しい異動先で購入する予定である。
|