研究課題/領域番号 |
23530269
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大石 亜希子 千葉大学, 法経学部, 教授 (20415821)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / アジア / アメリカ / ソーシャル・クオリティー / 女性労働 / 格差 |
研究概要 |
23年度の研究実績は以下の通り。第1に、育児休業給付金が女性の継続就労に及ぼす効果について分析を行い、投稿準備を進めている。 第2に、子どものいる世帯の中でも貧困リスクが高いことで知られる母子世帯に着目し、現在の貧困状況やセーフティーネットからの脱落、正規就労からの脱落がライフサイクルのどの段階で生じているかについて、過去の就業履歴を含むデータ(労働政策研究・研修機構が実施した調査の個票)を用いて分析を行った。結果の一部を紹介すると、母子世帯になってからの期間は貧困リスクの軽減につながっておらず、児童扶養手当のタイム・リミット設定を見直す必要があることが示唆された。 第3に、母子世帯の貧困の一因である養育費受給の低さに着目し、離別男性の社会経済的属性を国立社会保障・人口問題研究所「社会保障実態調査」に基づき分析した。その結果、離別男性の不安定就労や世帯規模の喪失による生計費負担の増加が背景にあることが示唆された。 第4に、「くらしと家族に関する健康調査」に基づき、母親の就労が子どもの健康にもたらす影響について分析を行い、8月の国際会議で報告した。 第5に、日韓台香港における女性の就労とワーク・ライフ・バランスについて、Asian Consortium for Social Quality で作成された国際比較データに基づく分析を行い、ソウル国立大学で開催された国際会議で報告した。第6に、7月にボストンで開催されたNBER Summer Instituteに参加し、研究交流を行うとともに最新の研究動向の把握に努めた。 第7に、広島大学助教・野崎祐子氏の科研と共同して12月に30名の研究者の参加を得て、「女性の就労と家族、子どもの教育に関するワークショップ」を東京で開催し、研究成果のブラッシュアップと普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
育児休業制度と女性就労については、ACSQ参加のアジア各国の研究者や米国の研究者と交流を行うとともに、論文としてとりまとめている。ACSQによるアジア各国についての国際比較データについては整備が進み、利用可能な状態となった。7月には当初計画通りNBER Summer Instituteに参加し、研究交流を進めるとともに、12月には広島大学・野崎祐子氏と共同ワークショップを開催して研究成果の普及・啓発に努めるなど、当初予定以上に進んでいる部分もある。公的統計データの個票利用申請については当初予定より遅れている部分があるが、「社会保障実態調査」など、当初予定していなかった新たなデータの利用が可能となり、分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は世帯形成メカニズムと出生時点における経済資源・親の人的資本格差に着目して研究を進める。とくに世帯形成メカニズムについては、婚前妊娠出生や離別母子などについて、米国のWen-Jui Han氏、Chien-chung Huan氏との連携を深め、分析を進める。アジアにおける女性の就労についても、ACSQ研究者と連携しつつ、国際会議での報告等を進める。母親の就労パターンの違いが子育て世帯間の所得格差に及ぼす影響については、公的統計の個票利用申請を行い、研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は本研究の先行研究として重要な研究を行っているHan氏とHuang氏を招聘する予定であり、その旅費(60万円)、および彼らを含めた研究会開催の会議費・会場費(20万円)が最も大きな支出項目となっている。そのほか国内研究者の招聘費用・旅費として5万円。研究会講師の謝金、研究補助員の謝金として合計20万円。その他、英文校閲、書籍購入等が15万円である。
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