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2012 年度 実施状況報告書

日本の乳業および乳製品市場のグローバル化に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530272
研究機関東京大学

研究代表者

矢坂 雅充  東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90191098)

キーワード中国
研究概要

中国およびオーストラリアでの日本企業の乳ビジネスの推移や事業展開における課題について調査研究を行った。
オーストラリアではライオン社(キリンHD)が旧デアリーファーマーズ、ナショナルフーズの工場を再編成し、乳ビジネスの展開を図っているが、牛乳小売価格低下の中で乳ビジネスの採算は悪化している。現地での調査などをつうじて、その主たる要因は取引先の工場の統合の不完全性、酪農生産者の経営状態の把握や酪農生産者との生乳取引などでイニシアチブをとることが難しく、買収した旧企業での取引が継続されていると考えられることなどが明らかになった。
中国では日本の乳業が生乳調達の実態を明らかにするために、内モンゴル自治区において数百等から数千頭規模の酪農企業へのインタビューを行った。零細規模の家族酪農経営で構成される酪農専業村は急速に減少しており、比較的大規模家族経営が入居している牧場園区でも飼料生産・調製技術や取引乳価水準は劣り、乳業直営牧場などへの集中が進んでいる。しかしこれらの大規模酪農企業では潤沢な資金や近代的な施設導入が可能になっているものの、乳牛の牛舎、飼養管理や糞尿処理などで画一的なマニュアルや仕様で設計されており、さまざまな生産リスクを高めている。また地場のトウモロコシの茎や葉を飼料として使用する家族酪農経営の大幅な縮小、アメリカなどからのトウモロコシや牧草をはじめとする購入飼料依存型の酪農生産への傾斜によって、ミルクサイクルともいえる価格変動を繰り返す市場で大規模酪農生産企業の経営リスクも高まっている。日本の中国での乳ビジネスの展開には、安定的かつ高品質の生乳調達が欠かせず、生乳取引を結ぶ酪農生産企業の選択、取引条件の内容が事業を進めるうえで重要な鍵になっていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

日本の乳業メーカーのオーストラリアおよび中国での乳ビジネスの展開について基礎的な調査研究を終えた。乳ビジネスの展開にとって、生乳調達のあり方がきわめて重要なポイントになっていることが確認されたといえよう。
ただし、生乳取引条件や需給調整など、具体的な乳ビジネスの進め方についての情報提供を求めることは難しく、乳ビジネスの経営が悪化していることもあり、ライオン社に依頼している質問への回答は得られそうにない。また中国との政治的な環境の悪化で補足的な調査を行うことはできなかった。

今後の研究の推進方策

日本の乳業メーカーの海外での乳ビジネス成功事例として知られている(株)明治のタイでの飲用牛乳ビジネスについて調査研究を進め、オーストラリアや中国での事例との比較をつうじて、海外での日本企業の乳ビジネスでの優位性や課題について検討することで、オーストラリアや中国での実態調査を補完したい。
雪印メグミルク社のインドネシアなどでの乳ビジネスの進展やEUでの乳業メーカーの国を超えた合併状況・影響などについても情報を収集し、日本のミルクサプライチェーンとの比較研究を進めていく。これらの海外の乳ビジネスに関する調査研究および国内の乳業メーカーの動向調査とともに調査研究のとりまとめを行いたい。

次年度の研究費の使用計画

日本の乳業や食品企業での国際乳ビジネスへの取り組みについての情報を、国内でのインタビューなどでアップデートする。またタイや中国などでの乳ビジネスについて、対象となる企業の動向を見極めながら海外調査研究を進めたい。そのため旅費を中心にして研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] メガファーム化する中国酪農2013

    • 著者名/発表者名
      矢坂雅充
    • 雑誌名

      デーリィマン

      巻: Vol.63、No.3 ページ: 90-91

  • [図書] 製配販をめぐる対抗と協調-サプライチェーン統合の現段階2013

    • 著者名/発表者名
      矢坂雅充
    • 総ページ数
      300
    • 出版者
      白桃書房

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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