本研究では、特許の出願行動と企業のパフォーマンスとの関係について、特許データベースPATSTATをはじめ、日米欧という特許三極のデータを活用し、企業レベルのデータに基づく国際比較分析を行い、日本企業の国際競争力を検討する目的とする。 最終年度では、①前年度に整理できている日本製造業企業のライセンス契約に関するデータに基づき、特許の薮(patent thicket)とライセンス行動についての分析を行った。分析の結果では、特許の藪の存在は企業のライセンス行動に有意な影響を与えることを示す一方で、特許の藪の存在は企業のポートフォリオ競争に繋がることも表された。同時に企業のライセンス行動はポートフォリオ競争を軽減する効果があることがわかった。当該研究成果の一部を2014年11月に東京にOECDとJPO共催の知財統計年会に報告した。②日米欧のソフトウェア特許出願行動の比較分析を行うために、USPTO特許分類に基づきソフトウェア特許の分類方法を検討した。そのうえで、日本企業をはじめ、米国企業、ドイツ企業のUSPTOに出願されたソフトウェア特許情報を抽出し比較分析用のデータベースの構築を試みた。初歩的な分析結果は、日本企業は主に画像処理やディスクファイル管理に関連するソフトウエア分野に出願しているのに対して、米国とドイツ企業の出願はデータベース管理やERP分野に集中していることを示した。また、企業間の特許の藪の存在は出願行動に影響を与えていることが明らかにされた。
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