研究課題/領域番号 |
23530280
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
中山 雄司 大阪府立大学, 経済学部, 准教授 (20326284)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子商取引 / 出版産業 / 電子書籍 |
研究概要 |
本研究の目的は,デジタル財流通チャネルの登場が複数流通チャネルの管理問題に与える影響の理論的考察を行うことである。特に出版産業を念頭に置き,出版産業の特徴(著作物再販,委託販売,返品制など)を取り込んだモデルの均衡分析および厚生分析を行うことである。本年度は研究の出発点として,電子書籍流通に関する事例を調べた。その中で、米国オライリーメディア社の紙の書籍と電子書籍(DRMフリー)のバンドル販売による割引や、同社がピアソン・テクノロジー・グループと共同で設立したサファリ・ブックス・オンライン(IT関連技術書やビデオ・トレーニングコースなどを定期購読料を徴収して運営するサイト)は、日本でも将来的に同様の戦略を実施する企業グループが登場する可能性もあり、モデル構築の際にも考慮すべき重要な事例である。 また、事例調査と並行して経済学(産業組織論)や経営学(マーケティング・サイエンス)の分野において電子商取引を含む,複数流通チャネルの管理問題を分析した既存文献やネットワークの経済学(特に,間接的ネットワーク効果に注目したマルチサイド市場に関する研究)の既存研究を調査した。そして,課題1[電子商取引を扱った既存の水平的差別化モデルに,電子書籍専用端末購入の意思決定ステージを導入した多段階ゲーム分析]と課題2[紙の書籍と電子書籍の両方を扱う流通業者を導入した場合への拡張]のためのモデルの構築を開始し,論文執筆の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1に関する基本モデルの完成にまで至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度中には課題1に関する基本モデルを完成させ、紙の書籍に再販制が導入された下で,自由価格制の電子書籍が登場した場合の分析を行う。そしてこの研究に目処をつけ、論文を完成させる。次に,課題2と課題3[著作権保有者の意思決定をモデルに導入して,著作権者と出版社の利害対立と社会厚生上の含意を分析]に取り組む。ただし、課題3の研究は予定通りに進まない可能性もある。その場合には,方針を変更して課題1と課題2に関して複数の研究成果を挙げることが出来るようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文執筆用のパーソナルコンピュータを更新する。ソフトウェア(計算機能を備えたワープロ,文献管理,プレゼンテーションソフトを含む一般的なオフィスソフト)はバージョンアップに従って更新する。旅費については国内出張で学会または研究会での成果報告(一泊二日の東京出張を2回)を想定している。謝金では文献整理等のために大学院生を研究補助で雇う。また,英語論文の校閲のための費用を計上している。その他では,研究成果発表費用として学会誌投稿料を想定している。
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