研究課題/領域番号 |
23530285
|
研究機関 | 千葉経済大学 |
研究代表者 |
片岡 光彦 千葉経済大学, 経済学部, 准教授 (20321713)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 生産要素 / 地域配分 / 効率性 / 地域格差 |
研究概要 |
世界第4位の人口と東西5千kmに及ぶ広大な国土を有する島嶼国家インドネシアは、過去40年間で高い経済成長を達成する一方で、独立以来の政策課題である地域間経済格差の是正に尽力してきた。しかし、現在でも経済活動の6割が国土面積の1割に満たないジャワ島に集中し、地域格差の是正はいまだ十分とは言えない状況にある。この要因には生産要素の地域間不均衡が大きく影響しているが、資本の地域データの制約からこの要因の解明に貢献する研究は現在まで行われていない。 本研究は、経済成長の達成と地域間経済格差の是正という政策目標の実現に苦慮する政府への政策的含意の提供を目的に、インドネシアの経済成長と地域格差の変化を生産要素の地域配分から考察を行う。研究の初年度となる平成23年度は、生産要素の地域配分の効率性を分析した。分析では、まず、インドネシアの26州別の生産額と生産要素のデータを整備し、その後、各州の生産額を被説明変数、生産要素(労働と資本)と時間的変化を説明変数とするコブ=ダグラス型州別生産関数のパネルデータ推計を行った。次に、推計結果の各変数のパラメータを技術制約、各要素の投入量の全国総計を資源制約として、全国の国民の経済厚生が最大となる競争均衡条件の下での要素配分(競争均衡配分)と生産額(競争均衡的生産額)を、計算可能な一般均衡モデルを用いて算定した。この競争均衡条件下での各州の生産額に対する実際の生産額の比率を地域配分の効率性として、その推移を分析した。 分析の結果、生産要素の地域配分の現状を見ると、ジャワ・バリ地域への資本集中、ジャワ外島の農村地域への労働人口の偏在、ジャカルタ周辺地域への労働人口の集中など資源配分の不均衡が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、(1)生産要素の地域データの整備と地域生産関数の推計、(2)確率的フロンテイア法やデータ包括分析法による効率性の影響を考慮した生産性成長率の推計の2つの研究項目を実施する予定であった。 実際には、(1)の研究実施中に、生産要素の地域配分の効率性の推移を分析するために、計算可能な一般均衡モデルを用いた競争均衡配分と競争均衡的生産額の算定作業を追加した。分析結果では、上記の記載のとおり興味深い分析結果が観察できたため、23年度はこの研究成果を学会報告し、さらに、研究論文として取りまとめて、投稿した。その一方で、この作業項目の追加で、(2)の作業開始時期が遅れ、23年度は先行研究のみで終わることとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、インドネシアの経済成長における確率的フロンテイア法やデータ包括分析法による効率性の影響を考慮した生産性成長率の推計を行う。また、ジャワ・バリ地域における資本の地域配分状況を、23年度に実施した分析手法とは異なるアプローチから検証する。この検証では、全国をジャワ・バリ地域と非ジャワ・バリ地域の2地域に分割して、両地域の資本の限界生産性を所与として、投資額あたりの域内総生産の押し上げ効果が地域間で均等化する投資の地域配分比率(均等配分率)を算定する。ジャワ・バリ地域への実際の投資額シェアと、この均等配分率とを比較して、当該地域への投資が効率的、もしくは衡平的に配分されているかを検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、概ね当初申請時に示した計画どおりである。しかし、前年度実施予定であった確率的フロンテイア法やデータ包括分析法による生産性分析の作業が遅れたため、前年度に計上しておいた当該分析に必要なソフトウエアLIMDEPを次年度に購入する。さらに、計量経済分析ソフトウエアEViewsやGAMS、論文管理ソフトEndNoteのバージョンアップ費用も必要である。 研究成果では、インドネシア地域学会と東アジア経済学会(シンガポール)での海外学会報告を予定しており、海外渡航費用及び学会参加費が必要となる。これらの成果はすべて英語で発表するため、英語論文校閲の専門サービスを利用する。 したがって、次年度の研究費の使用計画の内訳は以下のとおりである。物品費35万円、旅費50万円、謝金35万円 その他7万円
|