研究の最終年度は、地域間経済格差の要因となる地域間要素不均衡を検証すべく、ソロー成長会計モデルから導出した「投資の均等配分比率」を用いて、経済危機前後のインドネシアの地域開発政策の方向性を、明らかにした。投資の均等配分比率とは、当該地域の資本の経済成長に対する寄与度(直接効果)と他地域の資本が当該地域の経済成長に影響を与える寄与度(スピルオーバー効果)の2つの寄与度の合計が全地域で等しくなる衡平的な配分政策下で投資の地域シェアを示す。 均等配分率の算定に必要な資本の分配率は、各地域の生産額を説明変数、労働、物的資本、スピルオーバー効果を持つ他地域の資本の3変数を被説明変数とする地域生産関数の推計値を使った。生産関数は「資本の分配率は地域開発政策に依存するため各地域で異なる」として特定化した。他地域の資本は、2010年と2015年のインドネシア州間産業連関表から空間近接行列でウエイト付けして算定した。 検証の結果、各地域の資本の生産力効果は、ジャワ島各州は資源産出地域の各州ほど高くはなく、東部各州では低いことがわかった。さらに、均等配分率の推移をみると、ジャワ島各州は経済危機を境に資本投資の集中から拡散への変化を経験し、資源産出地域の各州では危機後の資本投資の集中、東部各州では観察期間中の低水準での推移を観察できた。ジャワ島各州の生産力効果がそれほど高くないことを考えると、経済危機前後の同地域への投資の集中・分散は投資の効率的地域配分から再分配的な地域配分への変化とはいえないことを示唆した。 この成果は、本年5月に国際地域学会世界大会で報告予定である。また、この手法をバブル経済後の日本経済に適応した論文は国際ジャーナルLetters in Spatial and Resource Sciences(2013年)で採択済である。
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