研究課題/領域番号 |
23530296
|
研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
吉田 千鶴 関東学院大学, 経済学部, 教授 (70339787)
|
研究分担者 |
前田 正子 甲南大学, マネジメント創造学部, 教授 (20596192)
天野 恵美子 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (20375215)
|
キーワード | 世帯行動 / 世帯内資源分配 |
研究概要 |
平成24年度は、以下の3つについて分析と調査を行った。第一に、日本の世帯内の消費分配と子供数について、1989年から2004年の期間分析を行い、その結果をアメリカ人口学会で報告した。分析の結果、子供のコスト負担の夫妻間の格差が広がっている可能性が示唆された。更に、世帯の消費需要に関する経済理論を利用し詳細な分析を進めている。 第二に、子供の養育費と子供の数・年齢、母親の就業について、日本、スウェーデン、フランス、アメリカ合衆国、韓国の先進5か国を比較分析した。子供の年齢や母親の就業状態によらず、フランスの養育費が最も低い。アメリカ、韓国、日本では、母親が就業している場合に、子供の養育費がより高くなる傾向にあるといえる。さらに、政策的なマクロの文脈を加えた分析の枠組みを構築しているところである。 第三に、結婚・出産・就業の意識と知識について、京阪地区の女性の大学生を対象にアンケート調査を行い、1113人の回答を得た。 これらの分析・調査の意義は以下のとおりである。日本では、男性よりも若い女性の出産意欲のほうが低い傾向があることが指摘され、結婚・出産の鍵を握るのは女性であるといえる。そこで、若い女性の出産意欲に影響するであろう子育てコストについて、第一の分析で、子供のコスト負担の夫妻間格差について知見を得ることは、少子化の原因を探るうえで重要であるといえる。また、第二の分析によって、政策などのマクロ的要因が、子育てコストの大きな部分を占める養育費にいかに影響しているかを知ることは、少子化に関する有効な政策立案のための基礎知識として意義があるといえる。第三の調査について、近い将来結婚や出産に関する選択に直面するであろう女性の大学生に対し、アンケート調査を行い、彼女らの意識や知識を左右する教育や環境要因などについて今後の研究の基礎データを集めたことに、調査の意義がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的、消費・労働・政策に関する世帯の意思決定とマクロ要因について、実証分析を進め、かつ、若い女性の就業・結婚・出産という意思決定にかかわる意識と知識についてアンケート調査を実施することができた。具体的な実証分析としては、消費については世帯内の消費配分の推計に関する手法の文献検索を進めた。子育てにかかわる消費のうち、大きな部分を占める養育費と母親就業の関係について、マクロ要因を含めた国際比較分析を進めている。 また、OECD諸国のマクロ政策について、指標となるデータを収集することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度に行った、女性の大学生の就業・結婚・出産に関するアンケート調査のデータを踏まえ、若い女性の意思決定を左右する意識や知識と、彼女らを取り巻く教育等のマクロ要因について実証分析を行う予定である。 消費と労働については、世帯内の消費配分について24年度に文献検索した手法に従い、推計モデルを構築し、さらに実証分析を進める予定である。さらに、先進5か国について、政策等のマクロ要因にかかわるデータ収集を進めているところであるが、これらマクロの文脈を分析に加え、子育てにかかわる消費と母親の就業について実証分析を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2010年の国勢調査を中心としたデータ収集を引き続き行い、また、マクロ要因が異なる国の国際比較分析を行うために、政策関連の文献収集を行う。学会報告等の旅費、24年度末に行った調査の調査報告書作成や本研究の最終年度としての報告書作成の費用を計上する。
|