研究課題/領域番号 |
23530298
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
藤野 敦子 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (50387990)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 雇用 / 家族 / 労働 / 人口 / グローバル化 |
研究概要 |
平成23年度は、二つの研究を進めた。 一つは、「雇用流動化の家族形成の影響‐日仏比較」である。今一つは、「日本の児童労働‐歴史に見る社会的・経済的メカニズム」である。 1.「雇用の流動化の家族形成への影響-日仏比較」2008年、2010年に日本、フランス両国で実施したアンケート調査のデータのうち、カップル20-49歳のサンプルを使用し、カップルが就いている雇用形態が出生意欲に及ぼす影響を分析した。日本のカップルは、非正規雇用に就いていると、男女ともに、出生意欲を低くし、非正規雇用の拡大が少子化につながることが示唆されている。特に短大卒以外の学歴を持った女性が非正規雇用に就いている場合に、カップルの出生意欲が低くなることが明らかにされた。日本の場合、非正規の働き方は男性には将来不安を与えているため、女性には、出産による仕事を喪失するリスクを与えているためと考えられる。一方、フランスでは、男性の場合、有期限雇用に就いている場合、女性の場合には、パートタイムに就いている場合にカップルの出生意欲を高めている。また、男性の場合には、失業者も出生意欲が高い。手厚い社会保障があること、有期限雇用、無期限雇用間の雇用間移動がしやすいことなどから将来不安が見受けられないことが関係している。国際比較分析から、制度の在り方を変えれば、非正規雇用の拡大が必ずしも少子化にはつながらないということが示唆できた。 2.「日本の児童労働-歴史に見る社会的・経済的メカニズム」グローバル化の中で、日本が他の国の児童労働と関わる可能性がある。また、世界における児童労働の存在は、途上国における出生率上昇の要因になり、貧困問題あるいは環境問題とも関係していく。そこで、日本の歴史における児童労働発生と児童労働問題解決のプロセスを考察し、現在の児童労働問題に対し何が示唆できるかを検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、研究実施計画の通り、まず一つ目のテーマである「雇用の流動化の家族形成への影響-日仏比較」の分析を行い、英語論文にし、日本ジェンダー学会での報告、フランスリール第一大学でのセミナーでの報告を実施することができた。さらに二つ目のテーマである、グローバル化における児童労働の問題を日本の歴史的な観点からとらえなおした本の一章(論文)を作成し、現在査読を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、Web上で、女性のキャリアと家族に関する日仏比較アンケート調査(日本女性1000人、フランス女性1000人)を実施する。研究協力者1名とともに、5月に仮説設定を行い、7,8月にアンケート調査票を作成する。12月に日仏同時にアンケート調査を実施する。1月以降、分析をする。ただし、フランスのアンケート調査に関しては、調査票作成時の仮説設定や事前テストなどに時間がかかるため、今年度実施ができない場合もありうる。また、質問数の増加などにより、今年度は日本のみを実施し、次年度の研究費を合算してフランスのアンケートをする必要がでてくるケースがある。その場合は、フランスのアンケート調査を次年度研究費と合わせ、平成25年度に実施する。平成24年度6月2-3日は、日本人口学会において、平成23年度の論文をさらに改善した論文「非正規雇用の拡大と家族形成:日本とフランスの比較考察」を報告する。平成25年度は、日仏アンケート調査の分析と同時に、日本、フランスの女性を対象に女性キャリアと家族に関するインタビュー調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本女性1000サンプル、フランス女性1000サンプル、質問数約30問のアンケート調査(Webアンケート)を民間調査会社に委託する。現段階の大まかな見積もり額は250万円である。フランスのアンケート調査票に対しては、校閲、校正を依頼する。(20万円)日本、フランスのアンケート調査に参考になる資料・文献を購入する。(5万円)平成24年6月に開催さる日本人口学会(東京大学)での報告のため、旅費が必要となる。(5万円)
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